著者
伊藤隆二 櫛渕欽也 池橋宏 中根晃 東正昭 谷口晋
巻号頁・発行日
no.21, pp.79-91, 1974 (Released:2011-09-30)
著者
氏原 暉男 森本 昇司 小野 珠乙 南 峰夫 池橋 宏
出版者
信州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1998

ミャンマー東部の山岳国境地帯はケシの栽培地帯として有名で,アヘン生産の原料となるケシ栽培を根絶することが重要課題となっているが,十分な成果が上がっていない.これは現地の自然および社会的条件に合致したケシに代わる換金作物が導入,確立されなかったからである.ケシは現地農民の唯一の収入源であり,ケシと同等以上の収入が得れれる代替作物の開発普及が不可欠である.このような観点から,平成10年8月から9月にかけて約2週間にわたり,シャン州コーカン地域のケシ栽培地帯の拠点の一つであるターシェータン村を中心に農家の経営実態と農作物の栽培状況などを調査した.さらに具体的な換金作物,薬草あるいは動物資源などについて,視察と聞き取り調査を実施した.その結果,シャン州の平地部では中国の雑種イネ品種を導入した先進的な稲作が行われているのに対して,ケシ栽培地帯の山岳地域では焼き畑が行われ,主にトウモロコシが栽培されていた.明らかに地域格差が認められ,ケシ栽培に頼らざるを得ない状況が認められた.そこで具体的に収入源となる可能性が有る代替作物あるいは動物製品について調査した.山岳地域から市場までの道路事情が悪く,特に雨期には通行止めもしばしばである.従って,果樹,野菜など保存がきかず,重量のある生ものは除外された.少量で価格が高く,保存がきくものとして薬草が考えられるが,聞き取り調査では有望な薬草は見つからなかった.一方,この地域は有名な茶の産地で,半発酵のコーカン茶は調製法などの工夫,向上により換金作物として可能性がある.また,山岳地帯の環境に適した作物としてソバについて日本産品種を試作した結果,十分な収量と品質が認められた.現地農民はソバの栽培経験を持っており,日本の需要家との価格交渉,およびヤンゴンまでの輸送法を確保できれば代替作物として可能性があることが明らかとなった.
著者
池橋 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-377, 1977-12-01

集団育種法の利点として,固定が進んでからの選抜の容易さや劣性遺伝子に支配されている形質が後期世代では高率でとらえられることなどが挙げられている。また初期世代のうちに可能な組換えが進行した後で,それを選抜に利用できることも集団育種法の利点と言える。しかしこの点の量的な評価は必ずしも容易ではない。この問題を選抜の具体的な場合に即して次のように設定することができよう。すたわち望ましくたい形質間相関が存在する場合に,無選抜で世代を進めると組換えの進行により形質間相関はどの程度に弱まるか。あるいは有望組換え個体の数は世代と共にどう変化するか。このような問題は常に育種家の関心事である。しかし関係する要因は多く,個々の実験から一般性のある答を得るのは容易でない。シミュレーションはこれらの問題を扱うのに適しており,その過程と結論は作物を栽培して行う実験の指針となるだろう。この論文ではまず組換え値と遺伝相関廉数の関係を通常の最的遺伝子の相加的モデルを基礎に検討し,両者の関数的関係を指摘Lた。次にこれを利用して多数の連鎖した遺伝子の確率的行動をもとにした,一種の2次元の準連続分布を構成し,与えられた組換え値ごとに,世代の進行にともなう遺伝相関係数の変化を求めた。その結果,遺伝相関係数は,大きな確率的変動をともなうため,組換えの進行の尺度としては不適当であるとみられた。一方高頻度の組換えから生ずる個体の数を,組換えの進行の尺度としてとらえると,この数はF_2では極めて少いが,F_4位までに急増することがみられ,とくに連鎖のある場合にこの傾向が顕著であった。これらの結果にもとづいて,F_2での遺伝相関係数が0.3程度となる模型集団について,F_2,F_3もしくはF_4で選抜を開始する選抜実験を試みた。その結果,遺伝的進歩,相関反応および有望組換え個体の数といった指標において,一般的にF_4で選抜を開始した方が有利であると結論された。しかしその有利さは,機会的変動や環境変動などの働きで,必ずしも顕著でないことが推察された。