著者
大野 一将 小原 聡将 竹下 実希 井上 慎一郎 水川 真二郎 長谷川 浩 神﨑 恒一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.179-185, 2017-04-25 (Released:2017-06-07)
参考文献数
24
被引用文献数
4 3

症例は86歳男性,ADLは自立しており,70歳で遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:以下HHT)と診断された.以来当科外来に通院していたが,今回初発の意識障害を来し,当院に緊急入院となった.受診時に羽ばたき振戦を認め,血清アンモニア値は128 μg/dlと高値であり,肝性脳症と診断した.精査のため血管造影を行ったところ,肝内びまん性門脈肝静脈シャントを認め,それに伴った肝性脳症と診断した.HHTの本態は,血管構築の異常による末梢血管拡張やシャント血管の形成が特徴であり,さらに年齢を重ねるごとにシャント量が増加する.そのため,高齢になると肝内びまん性門脈肝静脈シャントをも形成し,ごく稀に肝性脳症を来たすことがある.近年,本疾患の管理の質が向上しHHT患者は高齢化してきている.今後肝性脳症をきたすHHT患者が増加すると予想されるため貴重な症例と考え,ここに報告する.
著者
水川 真二郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.50-58, 2008 (Released:2008-03-10)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

目的:近年,わが国では高齢者人口の急激な増加に伴い,「高齢者の終末期医療」に対する関心が高まっている.しかし,高齢者にとって「望ましい死」とは何か,「高齢者の終末期医療」ではどのような医療環境やケアを優先すべきかなど数多くの課題が残されている.この研究では,高齢患者と家族および医師を含めた医療従事者が,「高齢者の終末期」をどのように捉え,「高齢者の終末期医療」において何が最も重要な要素であると認識しているのかについてアンケート調査を実施した.そして,これらの成績を解析することにより,「高齢者の終末期医療」における老年科医の役割について検討した.方法:対象は「高齢者の終末期医療」に関するアンケート調査に同意の得られた高齢患者148名(患者群),患者の家族76名(家族群),医師105名(医師群),看護師784名(看護師群)および介護職員193名(介護職員群)である.結果:"「高齢者の終末期」とはどのような状態か"の問いに対して,「生命予後の危機」と解答したものは医師群,看護師群,介護職員群でいずれも70%以上であった.しかし,患者群と家族群ではそれぞれ61%と52%で,医師群(75%)と比較して少なかった.これに対して「日常生活動作の低下」と解答したものは,患者群と家族群ではそれぞれ36%と45%で,医師群(23%),看護師群(8%),介護職員群(24%)よりも多かった."「高齢者の終末期医療」で重要な要素は何か"の問いに対しては,「鎮痛・苦痛除去」,「死に対する不安の解除」,「友人や家族とのコミュニケーション」,「尊厳をもった扱い」の4つを最重要と回答したものがいずれの群でも多かった(>70%).一方,「信条・習慣への配慮」は,医師群(63.8%)と比較して患者群(16.1%),家族群(28.2%)でいずれも少なかった.「在宅死」を重要な要素と回答したものは,医師群(37.5%)と比較して患者群(21.0%)と家族群(7.1%)で少なかった.結論:「高齢者の終末期医療」に対する捉え方や考え方は,患者や家族あるいは同じ医療に携わるものでも,その立場や職種によって大きく異なっていた.高齢者医療を専門とする老年科医は,「高齢者の終末期」に生じる様々な問題を全て医療の手法によって解決しようとはせずに,「高齢者の終末期医療」を患者や家族との共同作業であると捉え,共通の認識に基づいた医療の実践に努力すべきであると考えられた.
著者
池山 智之 安藤 吉伸 水川 真
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002

ロボットの上部下向きに取付けたカメラの画像を用いた自律型移動ロボットの狭所通り抜け走行技術について報告する。ロボットは, 直径約30cmの円柱形で, 狭所の距離を把握するため, その上部に設けた柱の先端に, 下向きにCCDカメラを搭載している。色の異なる2本の柱ではさまれた, ロボットの横幅よりもわずかに広い空間において, このロボットを衝突せずに通過させる技術を開発した。実際に隙間が約40cmの青い柱と赤い柱の環境を用意し, 実機実験により本技術の有効性を確認した。本稿ではその狭所通り抜け手法について示す。