著者
坂本 浩二 山内 真由美 中山 貞男 水流添 暢智 坂下 光明 藤川 義弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.187-193, 1987 (Released:2007-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

コレステロール負荷により誘発したウサギの高脂血症ならびに動脈硬化症に対するNIP-200(3,5-dimethyl-4,6-diphenyl-tetrahydro-2H-1,3,5-thiadiazine-2-thione)の作用を検討した.NIP-200は1%コレステロール飼料(HCD)に0.2%(w/w)添加した混餌飼料として,1日1回100g/匹を与え,16週間飼育した.HCD,NIP-200各群の体重増加と飼料摂取量は対照と比ぺて差がみられなかった.NIP-200は飼育4,10,14週において,HCD飼育による血漿の総脂質,総コレステロール(TC),リン脂質(PL),遊離コレステロールの増加を抑制した.高密度リポ蛋白中のTC(HDL-TC)はHCDの飼育2週,10~16週とNIP-200の飼育6~16週において,対照に比べて増加を示した.HDL-PLはNIP-200飼育6~10週においてHCD以上の増加を示した.TCとHDL-TCを用いたatherogenic indexはNIP-200飼育4,12週に低下を示し,PLとHDL-PLを用いたそれはNIP-200飼育4,6週と10~14週に低下を認めた.走査型電子顕微鏡による大動脈弓部内腔表面構造の観察では,脂肪斑の減少,内腔の山波形の溝の消失と内皮細胞核の膨化を抑制するなど,NIP-200はHCD飼育による形態変化を改善した.これらの結果から,NIP-200の脂質低下作用は腸管における脂質吸収抑制と肝における異化排泄促進によって発現する可能性が示唆された.また,NIP-200の抗動脈硬化作用には血漿HDL-TC,HDL-PL増加による脂質代謝改善が関与しているものと推測される.