著者
小塩 靖崇 住吉 太幹 藤井 千代 水野 雅文
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.75-84, 2019 (Released:2020-12-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

精神疾患に関する知識不足は、精神疾患の早期発見や支援の障壁となっている。このことから、思春期の若者のメンタルヘルスリテラシー向上が求められ、学校での教育プログラムの実施やその成果が報告されている。日本では2022年度より開始される新学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が追加され、約40年ぶりに精神疾患に関する内容が学校で扱われることとなった。 本稿では、国内外の先行研究の知見から、精神疾患の教え方、精神医療の専門家の関わり方を検討した。また、心の健康問題の援助希求や援助行動を促すための介入の計画に必要な理論的枠組みを考察した。 学校の授業では、新学習指導要領に記載される内容を網羅し、「どのような症状を経験したら、どこに(誰に)、どのように相談することで抱えている心の健康問題の解決につながるのか」等の、適切な対処に関する具体的な情報の提供が必須である。また、実際の行動変容につなげるためには、学校での知識教育のみでは不十分で、地域全体での周囲環境の整備が求められる。 学校教育への精神疾患に関する授業の導入をきっかけに、学校内だけでなく周囲の大人も、若者の心の健康問題に関心を持ち、受け入れ、対応する力を高めることが望まれる。また、若者に対する早期介入のニーズに対応するためには、従来の学校保健や地域医療の枠組みに加え、新しいシステムが必要となるだろう。
著者
根本 隆洋 水野 雅文
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-8, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
22

統合失調症の早期介入に対する世界的な関心の高まりの中で,予後決定因子として精神病未治療期間(duration of untreated psychosis : DUP)が注目を集めている。我々は本邦における DUPを報告し,その要因や転帰との関連について検討してきた。DUP 短縮への努力は治療臨界期における治療の開始に直結しているが,近年はさらに進んで,顕在発症予防の視点に立った疾患の前駆期における介入も世界的に展開されつつある。我々は発症危険状態(at-risk mental state : ARMS)と初回エピソード統合失調症に特化したケアユニットであるユースクリニックとユースデイケア「イルボスコ」を開設し,詳細なアセスメントを行うとともに,思春期・青年期に配慮した心理社会的アプローチと脳機能への直接的介入を目指した認知機能訓練とを両輪とした,包括的な治療サービスの提供を行っている。