- 著者
-
水野谷 航
- 出版者
- Japan Society of Nutrition and Food Science
- 雑誌
- 日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.1, pp.3-9, 2016 (Released:2016-02-29)
- 参考文献数
- 38
骨格筋を構成する筋線維には遅筋タイプと速筋タイプが存在し, タイプ組成により筋組織全体の代謝能力や運動能力が決まる。我々は, まず筋線維タイプの指標分子であるミオシン重鎖 (MyHC) アイソフォームを明瞭に分離する電気泳動プロトコルを開発し, 食品栄養学的な処理, 具体的には脂肪代謝が促進される生理条件が筋線維タイプを変化させるか調べた。その結果48時間絶食させたラット骨格筋では, MyHC組成は変化せず, 4週間寒冷環境下 (4℃) で飼育したラット骨格筋では, 遅筋主体の筋組織で遅筋タイプのMyHCが増加することを明らかにした。また, 魚油を配合した飼料を4週間ラットに給餌した結果, 大豆油摂取群に比べ, MyHC組成が有意に遅筋タイプ側へ変化することを明らかにした。筋線維タイプは, これまで運動によってのみ変化すると考えられていたが, 我々の研究から, 食品栄養学的処理でも筋線維タイプを制御できることが分かった。