- 著者
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氷室 昭三
- 出版者
- 有明工業高等専門学校
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
化合物をマイクロバブルによって分解できるかを明らかにした.有機化合物を形成している原子間の結合を切断するエネルギーをマイクロバブルがもっているどうかを明らかにするために,2.6×10-5mol/1の4-エチルフェノール水溶液1dm3をマイクロバブルでバブリングし,その水溶液の蛍光強度を測定した.この水溶液の蛍光強度がバブリング時間とともに減少し,バブリングによる消光作用を示したが,このとき極大の蛍光強度を示す波長のシフトは見られなかった.蛍光スペクトルのシフトが見られなかったことから,マイクロバブルが原子間の結合を切断していないことを見出すことができた.洗剤を含む水溶液をマイクロバブルで処理し,一定時間ごとに採取した溶液の表面張力を測定したところ,マイクロバブル処理前の洗剤溶液の表面張力は,濃度に依存して低下が大きくなるが,マイクロバブル処理後の洗剤水溶液における表面張力は上昇していることを見出した.これは洗剤の臨界ミセル濃度以下では,一般に,洗剤分子は空気に接している海面に集合する.ところが,水中にマイクロバブルが存在すると洗剤分子が気泡との海面に集合し,水中に分散するため,バブリングによって表面張力が時間とともに増加することを見出した.マイクロバブルで処理した仕込み水でつくった焼酎と通常の方法でつくった焼酎との味の違いを味覚センサで測定した.マイクロバブルで活性化した酵母でつくった焼酎の味が大きく変化するのを見出した.味覚には甘味,塩味,苦味,酸味,うま味があるが,ここではうま味の成分であるグルタミン酸ナトリウムの1mmol/1溶液についても測定したところ,マイクロバブルで仕込んだ焼酎が,グルタミン酸ナトリウムの応答に近づくことを見出した.