- 著者
-
永井 玉藻
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-26
本研究「フランシス・プーランクのオペラ作品におけるドラマトゥルギー」は、20世紀フランの作曲家、フランシス・プーランクのオペラ《カルメル会修道女の対話》を題材に、作品の資料調査とその分析を行うことで、作品のドラマトゥルギーの変遷とその意義を考察するものである。当該作品は、これまで多くの研究が行われてきた一方で、最も基礎的な資料研究が完全に欠落していた。そのため、作品の一次資料に関する情報が正確でないだけでなく、作曲中に繰り返し行われた変更や、改訂の詳細が、全く明らかになっていなかった。にもかかわらず、先行研究では繰り返し、作品の書法研究などが行われてきたのである。こうした状況に基づき、平成26年度には、2014年5月に資料調査(イタリア・ミラノのブライデンセ国立図書館リコルディ・アーカイブにおける調査)を行った。これにより、作品の一次資料に関するほぼ完全なデータを収集することができた。これらの結果は、2014年11月に行われた日本音楽学会第65回全国大会にて発表し、作曲家の自筆楽譜資料に基づいた分析を発展させた実証的な論を展開することができた。発表では、これまで公開されていなかったプーランクの自筆譜を、日本で初めて紹介することができ、その資料的価値を改めて検証することができた。一方、昨年度に複数行った海外での研究発表で出会った海外の研究者とは、年度を通してさらに密な関係を築くことができた。こうした活動を元に、博士論文の本格的な執筆が順調に進み、執筆の大筋が終了した。現在は、フランス語の訂正と本文の見直しを行い、また審査員の先生がたにもアドバイスをいただくなどしている。