著者
永井 竜児 白河 潤一 大野 礼一 品川 雅敏 畑野 孝太 須川 日加里 山中 幹宏 荒川 翔太郎 永井 美芽
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.47-53, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
22

アミノ酸や蛋白のアミノ基は,還元糖が有するカルボニル基と非酵素的に縮合反応を起こす。本反応は発見者であるフランスの食品化学者に由来してメイラード反応,あるいは蛋白に糖が結合する反応から糖化(英語では Glycation)とも呼ばれている。本反応はおおまかに二段階に分かれており,前期では血糖値の臨床マーカーとして既に世界的に測定されているヘモグロビン A1c(HbA1c)に代表されるアマドリ転位物が生成する。その後,酸化反応などによって,後期生成物である AGEs(Advanced Glycation End─ products)に変化する。当初,本反応は生体内で主にグルコースからゆっくりと進行すると考えられていたが,最近の研究から AGEs は解糖系,脂質過酸化,炎症反応などから生成する,グルコースより反応性の高いカルボニル化合物から迅速に生成することも明らかとなっている。これまで AGEs は加齢関連疾患や生活習慣病との関与が主に報告されてきたが,AGEs の測定系が確立されるにつれ,統合失調症をはじめとする精神疾患に対する AGEs の関与も明らかとなってきた。
著者
氏原 邦博 吉元 誠 和田 浩二 永井 竜児 広瀬 直人 照屋 亮
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.343-349, 2009-06-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

黒砂糖の色調,栄養成分,機能性成分および食味等に搾汁機のローラーの材質およびライミング処理が及ぼす影響を調査し,以下の結果を得た.<BR>(1) 市販黒砂糖の暗色化の原因は,搾汁機のローラー由来の鉄とライミング処理によるものであり,これらがアミノカルボニル反応を促進することで着色が進み,暗色化していることが明らかとなった.搾汁機のローラーの材質をステンレスに換え,ライミング処理しないことにより,黒砂糖の色調は明るくなった.<BR>(2) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖は鉄製ローラーで搾汁し,ライミング処理した黒砂糖よりも鉄含量とカルシウム含量は少なかったが,スクロース含量,アミノ酸組成,カリウム含量,マグネシウム含量および機能性成分であるポリフェノール含量は同程度であった.<BR>(3) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖の明るい色調は消費者に好まれ,食味は苦味,えぐみ等が改善されたことにより評価が優れ,料理への適性も高いと考えられた.
著者
白河 潤一 永井 竜児
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.299-304, 2015-04-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

メイラード反応は食品の加熱調理のみならず,生体内に存在する糖質とタンパク質間でも進行し,その後期生成物であるAGEsは老化や老化関連疾患の発症に関与している.以前AGEsは単なる老廃物として考えられていたが,AGEs化によって生体タンパク質が修飾されることにより,骨格タンパクの変性や,酵素の活性低下,タンパク質発現にも影響を与えると推察されている.そのため,生体AGEsの正確な測定は,病態のマーカーや創薬のターゲットという点からも注目されている.本稿では,生体の代謝・炎症など,さまざまな経路から生成するAGEsの測定法や,これまで明らかとなっている病態との関連性およびAGEs生成抑制物質の探索などについて紹介する.