- 著者
-
永瀬 開
田中 真理
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.123-134, 2015 (Released:2017-06-20)
- 参考文献数
- 28
本研究の目的は,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)者におけるユーモア体験について,構造的不適合を説明する手がかり(手がかり情報)がユーモア体験にかかわる認知処理に与える影響及び,ユーモア体験の強さに与える影響について検討を行うことであった。ASD者12名,典型発達者20名を対象に手がかり情報のある条件(手がかり有り条件),手がかり情報のない条件(手がかり無し条件)のユーモア刺激を用いて,ユーモア体験の強さに影響を与える「分かりやすさの認知」と「刺激の精緻化」の2つの認知的な処理の特性と「ユーモア体験の強さ」について比較検討を行った。その結果,主に以下の2点が認められた。1)典型発達者は手がかり有り条件において刺激を分かりやすく認知し,刺激の精緻化を多く行い,強いユーモア体験をする一方で,ASD者は手がかり情報についての条件間で差が見られなかった。2)典型発達者において,分かりやすさの認知と刺激の精緻化がユーモア体験の強さに影響を与える一方で,ASD者において刺激の精緻化のみがユーモア体験の強さに影響を与えていた。以上の結果から,典型発達者とASD者とでユーモア体験の強さに影響を与える認知的な処理の内実が異なることが示された。