著者
若木 重行 川合 達也 永石 一弥 石川 剛志
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-12, 2018-09-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究では,同位体分析を行うために単一の試料溶液からSr・Nd・Pbの3元素を分離する湿式化学分離法を開発した.新手法では,元素選択制の高い3種類の抽出樹脂(Sr樹脂・TRU樹脂・Ln樹脂)と陽イオン交換樹脂を用いた4段の小型カラムクロマトグラフィーを採用し,低ブランク・高時間効率のもとにこれら3元素を逐次分離することが可能になった.新手法においてTRU樹脂は,試料溶液から選択的にNdを含む希土類元素を分離するために用いられるが,TRU樹脂のNd保持率はカラムに導入された試料溶液中のFe量に依存して大きく変化することが明らかになった.本研究では,分析試料のタイプに応じて樹脂容量の異なる3種類のカラムを用意し,それぞれの樹脂容量ごとにNd保持率の低下を起こすFe量の上限値を明らかにした.適切なNd分離を行うためには,試料中のFe濃度をあらかじめ測定し,カラムに導入する試料量をコントロールすることが必要となる.新手法によって,単一試料溶液からの3元素逐次分離を低ブランク下で行うことが可能になったため,今後,掘削試料より分離した少量の有孔虫や,岩石薄片よりマイクロドリリングで分離した極微小量の珪酸塩試料などの微小量試料に対するマルチ同位体分析への応用が期待される.
著者
則末 和宏 松原 由奈 中川 正親 小畑 元 岡村 慶 永石 一弥 石川 剛志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>現代の海洋には人間活動によって負荷されたPbが存在しており,多くの海域で人為起源Pbが天然由来のバックグラウンドを大きく上回っている。人為起源Pbの発生源は様々であり,発生源に応じて特徴的な同位体比を示す。このため,海水中のPb同位体比を調べることにより,大気から海洋表層へもたらされた人為起源Pbの供給源を推定することができる。また,海水中のPb濃度と同位体比の時系列データがサンゴの骨格に記録されており,現在の海水中のPb の挙動を解析する上で有用な情報となる。このように,Pb同位体比は,人為起源の汚染物質の指標として重要であるのみならず,海洋物質循環の理解にも有用である。このような学術的な特性を有するPb同位体に着目した海洋化学研究を行う。</p>
著者
高柳 栄子 中山 裕樹 石川 剛志 永石 一弥 井龍 康文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.237-240, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3

We present strontium (Sr) isotope data for island-surface dolomites at Kita-daito-jima, northern Philippine Sea. The 87Sr/86Sr ratios of 50 samples fall within a wide range from 0.709037 to 0.709079, corresponding to 4.9-2.1 Ma. This wide range in Sr ages reflects the fact that the island-surface dolomites comprise variable mixtures of geochemically distinct, diachronous, dolomite crystal phases. Our results indicate that the Sr isotope ages of multi-generational dolomites on carbonate islands such as Niue and Little Bahama Bank, as well as Kita-daito-jima, should be re-examined employing a new method that determines the Sr isotope ratio of individual crystal phases.