著者
永野 元 秦 志新 賈 岸偉 加藤 嘉則 小林 正和 吉川 明彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.97, no.100, pp.37-42, 1997-06-17

六方晶構造が安定であるGaN(h-GaN)をGaAs(001)や3C-SiC(001)等の立方晶構造の基板上に成長することで, 立方晶構造のGaN (c-GaN)を作製できる. c-GaNはLDデバイス化に際し共振器や電極の形成がh-GaNに比べて容易であると考えられている. しかし基板表面や成長表面に凹凸が存在すると, c-GaN中には元々安定であるh-GaNが混在しやすく高品質なc-GaNを得るのが難しい. そこで, 本研究では原子状水素(H^*)を用いて清浄化及び平坦化を行ったGaAs基板上に, rf-MBE法によりGaNの成長を行った. その結果, GaN(002)X線ロッキングカープにおいてFWHMが90arcsecであるような, 高品質のc-GaNを得ることができた. これは, H^*により処理したGaAs基板表面が, 分子層オーダーで平坦でありそのステップ端に多数のキンクを持つため, 成長初期において成長核が一様, 高密度に生成し, GaNが一様に成長したためと考えられる.
著者
手嶋 政廣 鈴木 誠司 木舟 正 永野 元彦 林田 直明
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

宇宙線のエネルギースペクトルが10^<20>eVまで延びていることは実験的に知られている。これらの宇宙線の起源は銀河系外であると考えられているが、既存の天体での粒子加速により説明するのは容易ではない。これらの宇宙線の起源の特定には、精度良い宇宙線のエネルギー測定とその粒子同定が重要である。現在稼動している検出器では粒子同定ははなはだ困難であり、将来の検出器としてはこの識別能力を持つ必要がある。宇宙線が大気に入ってくると、大気原子核と衝突し多数の二次粒子を生成する、この現象を空気シャワー現象という。この空気シャワーの最大発達の位置X_<max>が親の粒子同定に有効であることを米国Fly's Eyeの実験は示した。さらに高分解能の装置による測定によりよい実り多い結果が期待できる。日本の宇宙線研究所を中心とする我々のグループは、さらに高分解能の撮像システムからなる。Telescope Arrayを計画している。本試験研究では、Telescope Array計画に必要とされる高分解能の空気シャワーシンチレーション光撮像装置の開発研究を行った。この撮像装置のデバイスとして64チャンネルマルチアノード浜松ホトニクスと共同で開発を行ない、当初の目標としていた仕様を満たすことができた。
著者
永野 元彦 小早川 恵三 政池 明
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

超高エネルギー宇宙線を観測する方法として、超高エネルギー宇宙線が大気中で作る空気シャワー中の電子が窒素分子を励起して発する蛍光を、遠く離れた場所に設置した望遠鏡で観測する方法が実施されている。また観測有効面積をより大きくするため、国際宇宙ステーションに望遠鏡を設置し観測するEUSO計画が日、欧、米の共同研究として推進されている。これらの観測で宇宙線のエネルギーを決定するには、大気中での電子による窒素分子の発光効率が基本であるが、十分なデータは存在しなかった。本研究は大気を模したチェンバー内で、電子による発光効率、発光時間の気圧依存性を測定することを目的とする。実験は、放射性同位元素^<90>Sr→^<90>Y→^<90>Zrのβ崩壊を利用して行った。N^+_2及びN_2の主な発光波長315,337,357,381,391,400nmを中心としたバンド幅10nmの干渉フィルターをとりつけた6波長領域で測定をおこなった。本測定中に乾燥空気中の値が従来の結果とかなり差があることが判明したため、乾燥空気中での再測定をおこない、結果をAstroparticle Physicsに投稿した。主な結果は以下のとおりである。(1)バンド幅中に2本のラインが入っている場合には、それぞれの観測光子数と発光時間の気圧依存性から、二成分解析をおこない、計7本のラインにつき発光効率及びその密度、温度依存関数のパラメータを決定した。(2)宇宙線観測に必要な300-410nmでの発光光子数は1気圧、20℃の大気中で、1電子、1mあたり3.75±0.15である。この値はこれまで実験で使用されていた値より17%大きい。(3)この結果を使うと、Fly's EyeやHiRes実験で決めた宇宙線のエネルギーは平均10%大きく見積もっている。