著者
佐藤 健二 池永 満生 佐藤 吉昭 喜多野 征夫 佐野 栄春
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.963, 1985 (Released:2014-08-20)

色素性乾皮症(XP)患者を太陽紫外線から保護する方法を検討した.A群XP患者の皮膚における紫外線紅斑の作用波長は,中波長紫外線のみならず340nmにまで及ぶことが知られている.この波長域の紫外線を効率よく遮断することを目的として種々の素材を調べた.その結果,服の生地では軽くて蒸気をよく通すハイレークエレット(太糸)があり,これを用いた衣服にフードを付け,フードの前にボンセットやUVC-400(農業用紫外線遮断フィルム)を垂らすと外出が可能となる.また,窓ガラスを透過した太陽光線には上記波長域の紫外線が含まれているが,窓ガラスに,スコッチティントP-70,ガラステクト,サーモラックスTF-100,サンマイルドCL-クリアーなどを貼ればこれを除くことができる.室内照明には,紫外線を含まない退色防止用蛍光ランプがある.これらの方法により,XP患者は,日常生活において,日焼けとそれにもとづく種々の皮膚障害を防ぐことができる.
著者
谷垣 武彦 佐藤 健二 佐野 栄春 羽倉 明 湯通堂 満寿男 樋口 冨士夫 池永 満生 渡辺 信一郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.15, 1984 (Released:2014-08-20)

著者らは今までに疣贅状表皮発育異常症(EV)の患者から3種類の異なるHPVを分離し,EVは数種類のヒトイボウイルス(HPV)に起因していることを明らかにしてきた.今回本邦におけるEVの実態調査を行った結果,その臨床像,皮膚悪性腫瘍の併発にも差異があることを明らかにした.本調査患者66例の家系中,近親結婚が44%を占め,本疾患は高い確率で遺伝が背後にあり,劣性遺伝といえる.患者分布は北海道,東北のような寒い地方は少なく,暖かい九州では多数見られた.皮膚悪性腫瘍の併発も南ほど多い傾向か見られた.癌の発生部位は,いわゆる露光部位が72.2%も占めた.本疾患は血族結婚をはじめとする遺伝的背景の上に,HPV感染が生じ,太陽紫外線らの環境因子によって皮膚悪性腫瘍が発生,つまりウイルス・紫外線及び宿主という三者の相互作用が発癌に関与していることが本疫学調査から明らかにされた.
著者
池永 満生 吉川 勲 古城 台 加藤 由美子 綾木 歳一 梁 治子 石崎 寛治 加藤 友久 山本 華子 原 隆二郎 Ikenaga Mitsuo Yoshikawa Isao Kojo Moto Kato Yumiko Ayaki Toshikazu Ryo Haruko Ishizaki Kanji Kato Tomohisa Yamamoto Hanako Hara Ryujiro
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.306-338, 1994-10-20

HZE(高エネルギー重荷電粒子)および宇宙放射線の遺伝的影響を調べるため、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の成虫雄と幼虫をスペースシャトル/エンデバー号(STS-47)に搭載し、雄の生殖細胞(精子やその元となる精原細胞など)に起こる伴性劣性致死突然変異と、幼虫の翅原基体細胞に起こる染色体のつなぎかえによる突然変異を調べた。用いた系統は、標準的な野生株(Canton-S)と放射線高感受性株(mei-41)である。各系統で、成虫雄は200匹ずつ、幼虫は約6000匹ずつを搭載し宇宙環境に曝すとともに、ほぼ同数を地上対照群として、宇宙飛行群と同じ環境条件(温度と湿度)で飼育した。宇宙飛行は約8日間であった。帰還した雄のハエは、伴性劣性致死突然変異を調べるため、検出用系統の処女雌に交配し、次々世代で致死遺伝子を保有しているX染色体を検出した。宇宙飛行群の致死遺伝子をもった染色体頻度は、地上対照群の頻度に比べて、野生株では2倍、放射線高感受性株では3倍高かった。幼虫は、帰還時にほとんどが蛹になっており、翌日より徐々に羽化が始まった。羽化した成虫は、順次70%アルコールで貯蔵し、後に翅標本を作成して、染色体突然変異由来の翅毛変異スポットを調べた。野生株では、宇宙飛行群と地上対照群の頻度は、ほぼ同じであった。放射線高感受性株から分離してくるMuller-5個体における頻度は、地上対照群に比べて宇宙飛行群では、1.5倍高かった。しかし、放射線高感受性個体における宇宙飛行群の頻度は、地上対照群に比べて有意に低い頻度を示した。地上対照群に比べて、宇宙飛行群の劣性致死突然変異の高頻度は、生殖細胞において、放射線と微小重力の突然変異誘発作用への相乗効果を示唆している。しかし、この相乗効果は、体細胞の染色体突然変異誘発作用に対しては観察されなかった。
著者
池永 満生 滝本 晃一 石崎 寛治
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、X線で誘発される突然変異が、どのようなDNAの塩基配列の変化によるかを明らかにすることである。このために、プラスミドpHA7上にクロ-ニングされている大腸菌のcAMPレセプタ-蛋白(crp)遺伝子について解析した。X線を照射したpHA7を大腸菌にトランスフェクションし、ラクト-ス発酵能を指標にしてcrp遺伝子に突然変異が生じているクロ-ンを多数分離した。これらの変異株からプラスミドを回収して、crp遺伝子の全塩基配列(627塩基)をサンガ-法で決定した。96個の突然変異クロ-ンについて解析し、92個の塩基配列の変化を検出した。その内訳は、塩基置換型突然変異が74個とフレ-ムシフト突然変異が18個であった。また、74個の塩基置換の中では、GCからATへのtransitionが56個、ATからGCへのtransitionが1個、残りの17個は、transversionであった。更に興味あることは、56個のtransitionの中で、実に41個が同一の場所(706番目のGC塩基対)に生じていたことである。つまり、この位置がX線による突然変異誘発のホットスポットになっていた。X線による損傷はランダムに生じると考えられており、このように明確なホットスポットの存在は過去に報告された例がない。恐らくは、この部分がcAMPレセプタ-蛋白の機能にとって、非常に重要なアミノ酸をコ-ドしているためだと考えられる。X線との比較のために、ニトロソグアニジン(MNNG)で誘発した突然変異についても解析した。検出した42個のDNA塩基配列の内訳は、GCからAT、ATからGCへのtransitionがそれぞれ39個と2個、フレ-ムシフトが1個であった。また、MNNGについてもX線と同じ場所がホットスポットになっていた。