著者
池田 善昭
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.287-307, 1965

この研究は島根県内の諸都市について,買廻購買および通勤流動の地域的な中心地としての機能を統計的に調査したものに,それらの都市圏の2, 3の例について,地域開発の点から眺めた経済構造の現地聴取調査を加え,現状の概況を整理したものである.<br> 島根県は,山陽に比べて経済開発のきわめて立ち遅れた山陰の一つとして,いわゆるベルト地帯にみられるコンビナート形成や農業近代化などの,経済の高度成長からとり残された地方である.したがって,都市の成長も都市圏の拡大と並行せず,しかも,各都市の核心地域としての機能も松江市・出雲市などを除いてきわめて弱い。また,核心都市も山陰本線沿線に飛石状に分布し,都市連合は全くみられない.しかも,東部から中部の山間は広島県の経済圏に全く依存し,さらには都市域においても松江市以外は年々多くの人口を県外に流出している.このことは,地域開発計画においてもきわめて深刻な課題となっており,流通革命の進行する中で,経済圏の質的拡大への要求を生んでいる。<br> 松江市周辺では,中海干拓工事が既に着工し,さらに宍道湖岸の旅館団地造成,島根半島のスカイライン計画が既に実施段階に入り,県内への観光客の増大が国立公園への島根半島・隠岐・三瓶山の編入後みられるようになり,県下東部沿岸地域にはようやく開発の効果が姿をあらわそうとしている.また,江川開発構想が三江線完成計画の発表と並列的に話題にのぼりはじめた.これらの問題を,松江市・出雲市・江津市を中心に整理した。