著者
高橋 英之 岡田 浩之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.450-463, 2010-08-15 (Released:2010-11-15)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

コミュニケーションは人間の社会性の基盤となるものである.コミュニケーションは情報交換であり,一般的にはそこに曖昧さは必要が無いと考えられる.本論文では,人間のコミュニケーションに含まれる曖昧さが,特に大きな規模の社会集団では非常に重要な機能を持つという仮説を提起し,それを検討するためのシミュレーションと二つの顔表情を題材とした心理実験を行った.本論文ではそれらの研究の詳細を述べるとともに,それらの結果を受け,社会性やコミュニケーションの背後には曖昧さを処理する脳機能が大きな働きをしているのではないかという議論を行った.
著者
岡田 浩樹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.15-38, 2012-03

本論文は人類の宇宙への進出について人文科学的なアプローチを行う意義について検討する.まず宇宙への進出が人文科学の学問分野において,新しいフィールとトピックをもたらすことを議論する.ついで,生活世界の概念を手がかりに,近現代に人類が経験してきた近代化およびグローバリゼーションと宇宙開発の関係について言及した後に人文科学が宇宙への進出に接近する際の3つのアプローチと時間軸,空間軸の問題について検討する.その上で,文化人類学の研究史と宇宙研究の関連について述べ,「宇宙人類学」が取り扱うことのできるトピックを列挙する.そして最後に,そうしたトピックの一つの事例として観光人類学の観点から宇宙観光することの問題を議論し,宇宙開発,宇宙への進出について文化人類学さらに人文科学からの接近の有効性を示す.
著者
岡田 浩樹
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.284-294, 1997-06-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
19

一般に韓服 (ハンボク) とは, 韓国における伝統的な衣服の総称である.原色をふんだんに用いた女性のチマ・チョゴリは韓国人にとって伝統的民族文化のシンボルとなっている.しかし, 今日のようにチマ・チョゴリが韓民族文化のシンボルとなり, またそのように語られることには, 韓国人が日本による植民地統治とその後の近代化の中で他者 (異文化) を意識し, その視線を内面化していく過程を読みとることができる.本稿は, 近代以降におけるモノとモノをめぐる語りをテキストとして読みとることにより, 特定のモノがある伝統や民族といったシンボリックな価値を帯びていく過程を明らかにする.さらにそのような過程の枠組みである近代以降の社会・文化を読み解いていこうとする試みのひとつである.
著者
今井 むつみ 岡田 浩之
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ヒトの非論理的だが効率のよい思考の背景に、本来一方向でしか成り立たないA→Bの関係の学習から逆方向のB→Aを同時に推論してしまう「対称性バイアス」があると言われている。このバイアスは私たちの言語学習と深い関連をもつと考えられてきたが、その詳細や発達的・進化的起源は不明である。本研究ではヒト乳児とチンパンジーの種間比較から、対称性バイアスがヒトで言語獲得以前に現れること、チンパンジーに比べヒトではこのバイアスが強く現れることを明らかにした。以上の結果をふまえ、対称性バイアスの発達や言語機能との関係等について考察した。
著者
岡田 浩 鈴木 渉太
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.93-99, 2020-12-10 (Released:2020-12-30)
参考文献数
11

During the COVID-19 pandemic, community pharmacies provided reliable information to the public as well as masks, disinfectants and drug supplies. This review article first describes the information and support provided to pharmacists and pharmacies by the U.S. CDC, FIP, and Pharmaceutical associations in USA, UK, Canada, and Australia. Lastly, the activities of Kyoto University SPH, which provided information on infection control to community pharmacies in Japan during the COVID-19 pandemic.
著者
宮崎 美智子 高橋 英之 岡田 浩之 開 一夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.9-28, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
56

The emergence of “Sense of agency” contributes to self-recognition. However there are few useful experimental paradigms for evaluating the development process of the sense of agency in young infants because the sense of agency is a subjective sense and young infants cannot verbally describe their internal experience. In this article, we propose a new experimental paradigm for examining the sense of agency using on-line eye tracking which we named “eye-scratch task”. This task enables us to evaluate the emergence processes of the sense of agency by a trajectory of voluntary eye movement. Besides, this task enables direct comparison of eye movement trajectories between infants and adults in common criteria. Hence, we can discriminate whether an infant feels the sense of agency or not by comparison with adults. Further, we analyzed participants' behavior in the task by the concept of feed-forward model that are the most famous computational frameworks for motor control and sense of agency. And we claim that our new infant's model based measurement give fruitful suggestions to the computational modeling for the development process of the sense of agency and self-recognition.
著者
岡田 浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.3, pp.367-371, 2015 (Released:2015-03-01)
参考文献数
13

The number of Japanese patients with chronic diseases is increasing year by year largely because of the acceleration of demographic aging and lifestyle changes in Japan. Although many patients with chronic diseases receive their medications from pharmacists, many community pharmacists have not changed their communication style with their patients. Empowerment is the basic idea that patient support is not widely known by pharmacists but the certified diabetes educator (CDE). We started Diabetes Theater, a program for healthcare providers that includes short drama and discussion with attendees, in 2009. The concept of the program is empowerment for patients: a process to help patients make better healthcare decisions. In addition, we launched another educational program to help community pharmacists learn about communication skills with diabetes patients named “The Three star Pharmacist Training Program” in 2012. In this article, we discuss our forthcoming plans to spread these ideas of empowerment among pharmacists.
著者
岡田 浩佑 山口 弓子 鎌田 七男 岡田 正浩 加藤 重子 佐々木 秀美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.396-403, 2016-10-25 (Released:2016-11-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:われわれは,多剤処方(Polypharmacy)に関する研究の一環として,高齢者に対する必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬につき検討を行った.方法:原爆養護ホーム神田山やすらぎ園の2012年4月~2015年11月の入園者160名について,必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬の節減に関連して,プロトンポンプ阻害薬の長期間内服者の便ピロリ菌抗原,血中抗体,血清ペプシノゲンIおよびIIを測定した.結果:2012年4月と2014年8月時点での6剤以上使用者は,それぞれ55.2%と49.0%で,抗潰瘍薬の使用者は,それぞれ50.0%と49.0%であった.抗潰瘍薬使用者のうち20名について,ピロリ菌やペプシノゲンについての測定を行ったが,その測定結果は抗潰瘍薬使用の継続や中止の判断に役立たなかった.むしろ,自覚的症状,他覚的徴候にもとづき中止を試みたところ,抗潰瘍薬使用者の多くが中止可能で6.0%になった.結論:特別養護施設において,多剤処方の形で最も頻繁に使用されている抗潰瘍薬は,入園者がステロイド薬服用中その他特別の状態であることを除けば,自覚症状や他覚的徴候のもとに多くの場合,使用中止が可能であると判断された.すでに実施した利尿薬節減による転倒骨折の減少効果,高カリウム血症治療薬の使用中止,造血薬葉酸の使用中止などを参考に,今後,高齢者の睡眠薬,下剤,その他の薬剤使用の改善について検討することが必要である.
著者
野村 郁也 鮫島 和行 植田 一博 鷲田 祐一 岡田 浩之 大森 隆司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2012 (Released:2012-07-20)

新商品が次々と発売される消費社会において,既知の商品と未知の商品との間の選択は日常的に行われており,いずれを選択するかは消費者行動の重要な一面となっているが,このような選択に関する実験的研究はまだ少ない.本研究では,ミネラルウォーターを用いて,実験参加者にとって既知の商品と未知の商品との間の選択を繰り返し行い,その選択に関わる個人特性について検討した.さらに,商品選択を行っているときの脳活動をfMRI計測によって調べた.その結果,情報探索的な実験参加者ほど未知の商品を選択する割合が高くなる傾向が見られ,また,未知の商品の選択時には右前頭極に活動が見られた.これらの結果はともに未知の商品を選択することが情報を得るための行動であることを示唆するとともに,損得勘定に基づく判断であるとする従来のマーケティング現場の通念を変えうるものである.
著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.
著者
岡田 浩
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.60-65,269, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
7

In recent years, both national and local elections have often recorded the worst voting turnout in Japan. In news articles, they say the battenness of choice in elections, which is caused by the convergence of Japanese political parties, is one reason for this decline in voting turnout.By analysis of survey data in Sendai City in Japan, this paper attempts to examine this argument.In this paper, it is shown that the electorate's cognition of party differentials declined suddenly from 1993 and it had an independent effect on voting turnout, even controlling party identification.
著者
鈴木 渉太 岡田 浩 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.158-160, 2020-12-20 (Released:2020-12-29)
参考文献数
9
被引用文献数
2

著者らは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関連して,薬剤師から外国人患者への情報提供を支援するために,都道府県のWebサイトから多言語で相談可能な連絡先情報を収集してまとめ,薬剤師向けのWebサイトで紹介した.COVID-19対策を機に,薬局には各施設での外国人対応を見直し,災害時だけでなく日常的にも外国人が安心して利用できる場となるように,受け入れ体制の整備が求められる.
著者
岡田 浩之 鮫島 和行
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.241-247, 2020-09-01 (Released:2020-09-15)
参考文献数
108
著者
喜馬 佳也乃 猪股 泰広 曽 斌丹 岡田 浩平 加藤 ゆかり 松村 健太郎 山本 純 劉 博文
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本研究で対象とする筑波山は,茨城県つくば市と桜川市との市境に位置する山であり,日本百名山の一つに選定されている.筑波山は二つの嶺を有し,西側の標高871mの嶺が男体山,東側の標高877mの嶺が女体山と称される.南の山麓には男体山と女体山とをご神体とする筑波山神社が鎮座し,門前町が形成されている.本研究では筑波山における来訪者の特性や交通媒体の変化に伴う筑波山門前町の観光空間としての性格の変容とその過程を明らかにした.<br> 筑波山は古代から文献に登場しており,万葉集には歌垣の地として紹介されている.古くから人々に親しまれる筑波山には筑波山神社が古代,知足院中禅寺が781年には建立された.しかし,中世には神仏習合が進んだ.江戸時代には,都の鬼門を守護する山として幕府の保護を受け,中禅寺の南方に門前町が整備された.それによって旅籠や遊女屋,茶屋や土産物屋が集積し,現在まで続く門前町が形成されることとなる.明治時代に入ると,廃仏毀釈によって中禅寺が取り壊され,中禅寺本堂跡地に現在の筑波山神社拝殿が造営された.これにより中禅寺の門前町であった地域が筑波山神社の門前町となった.<br> 門前町は明治時代に一時衰退するも,東京と水戸や土浦とを結ぶ鉄道が整備される中で,再び賑いをみせた.1925年にはケーブルカー,1966年にはロープウェイが設置され容易に登頂できるようになった.また1914年から1987年まで運営していた土浦と筑波山を結ぶ筑波鉄道,1965年に完成した筑波スカイライン,2005年に開通したつくばエクスプレスのように道路や鉄道の整備が行われ筑波山域内および筑波山への交通の利便性が向上した.<br> 筑波山は都心から70 kmという立地もあり,戦前は宿泊を伴う参拝客や,講組織のような団体客が多かった.それが戦後になると,道路交通網の発達や自動車の普及により,バスを利用した団体ツアー客や自家用車による個人客が増加した.しかし,この頃には日光を代表とする関東圏の他の観光目的地へのマスツーリズム形態が進展したことにより,筑波山の観光地域としての相対的地位が低下した.モータリゼーションの進展は,旅館から土産物屋に転向する店舗をもたらしたとともに,筑波鉄道などの公共交通の衰退に繋がり,筑波山門前町の観光地域としての地位をさらに低下させた.<br> 観光地として低迷していた筑波山門前町に新風をもたらしたのが2005年のつくばエクスプレス開通と近年の登山ブームの到来である.2001年に開湯した筑波山温泉も,多くの登山者に利用されている.しかし,登山ブームによって創出された来訪者は交通の結節点となる門前町に食事等で滞在することが少なく,観光地内での門前町の実質的な中心性はそれほど上昇していない.<br> このように門前町では登山ブームにより創出された来訪者を十分に取り込めていない.その背景には,門前町の観光関連施設経営者の高齢化といった地域内部の課題も少なからず関係している.しかし,門前町の活性化には筑波山神社を主目的とする来訪者の存在も必要であり,その意味では御朱印帳などの新たな取り組みは注目される.<br>
著者
中森 泰三 藤原 直哉 松本 直幸 岡田 浩明
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.84, pp.5-9, 2009-03-31

持続可能な農業に向けて農業生態系の生物多様性に関心が高まっている.日本では農業生態系におけるトビムシの多様性に関する知見は限られている.そこで,我々は慣行および保全型畑地に加えて森林土壌およびリター堆肥におけるトビムシの種組成を明らかにした.総個体数および種数ともに慣行畑地より保全型畑地において多かった.また,畑地土壌からMesaphorura silvicola(Folsom)が日本から初めて得られたので合わせて報告する.
著者
朝倉 敏夫 太田 心平 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹 韓 景旭 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

東アジアのコリアン・ネットワークについて、既存の研究では明らかとなっていなかった、ないし否定されてきた3点が明らかとなった。越域性、多重性、主体性の3点である。この研究成果の主たる報告書、および現地還元活動として、『韓民族海外同胞の現住所―当事者と日本の研究者の声』(學研文化社、2012)を、韓国語にて出版した。