著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.1-26, 2011-06-30

要旨】文化は「遊び」の中から発生し,日常を超えた「遊び」は自由な創造性の根源であり,文明の駆動力である。ギリシャ社会が獲得した宗教的生活の核心的象徴である祭典は,互いに死力を尽くす戦闘状態にあったポリス間の一切の戦闘を禁止するという驚くべき秩序を保って継続された。それは,宣戦布告もない不断の戦闘状態に晒される精神的緊張と抑圧からの解放であるとともに,アゴン(競争)によって,常に他者を凌駕しようと意欲したギリシャ人の善と美を創造する身体への憧憬の源泉でもあった。祭典がテストしたのは,人間の境界を越え行く精神と身体が一体化したアレテー(卓越性)である。ポリスの命運に自由な生存を託し,最善を尽くさんとする不滅の行動原理を堅持したギリシャ人は,感性に支えられた生存の意思(生き甲斐)によって生命を意義づけた歴史的民族であった。
著者
山本 武志 河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.1-18, 2016-06-30

医師,看護師,理学療法士の3職種の13のプロダクト(文書・声明文・綱領等)の内容を精査し,90のコード,21のカテゴリ,7領域,3分野で構成された「医療プロフェッショナリズム概念」を構築した。次に,1990年以降のプロフェッショナリズム概念の変遷を検討した。「科学的根拠に基づく医療・ケア」,「専門職連携・協働におけるコンフリクト・マネジメント」,「ハンド・オーバー」,「安全文化の普及・推進」,「マス・メディアの利用と情報提供のあり方」などの新しい概念の登場によるプロフェッショナリズム概念の拡大がみられた。また,患者の意思決定への参加から,患者の自律性を尊重するなど,プロフェッショナリズム概念の質の変化が認められた。概念の変化に応じた卒前・卒後の教育・学習の転換が求められるが,専門職連携教育をプロフェッショナリズムを涵養する1つの方略として提示した。
著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.163-196, 2010-12-25

ポリスの存続という至上命題の中で,古代ギリシャ人が人間の身体に抱いていた観念は,精神と乖離した二元論的な理解ではなく,彼らの生存の内的欲求を意義づけるエートス(ethos)と一体のものであった。貴族文化の余韻をとどめながらも,人間の内面は身体に表現されることを確信し,その身体を創造せんとする卓越性(アレテー)の概念と結びつき,戦士共同体における生命のアイデンティティを構成することにって,ギリシャ文化や文明をもたらした主要な源泉となった。死すべき運命を悼みながら,その反映としての不滅の栄光を保障する卓越した勇気の顕現を,ポリス間の絶えざる戦闘という不幸の中で具現しようとしたギリシャ人は,英雄精神によって不死の神に至らんとする飽くなき憧憬を抱き続け,鍛錬された身体的能力と,限りない自己啓発を希求する精神的能力の渾然一体化した「カロカガティア」という,人間のありうべき理想像に関する概念的遺産を今日に伝える。
著者
笹田 麻由香 岩田 銀子 河口 明人
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.92-98, 2010-04
参考文献数
20
被引用文献数
1

背景:低出生体重児は将来的に生活習慣病を発症する頻度が高いことが指摘されている。一方,わが国では母親の低栄養状態との関連が示唆される低出生体重児の増加傾向が続いている。このため胎児発育にかかわる妊婦の体重管理の定量的な評価は重要な課題である。方法と結果:単胎妊婦33名を対象として,母親の体重変化を,母親実質体重増加量(子宮・皮下脂肪・循環血液増加量など).胎児体重,胎盤重量,羊水量に細分化し,胎児の発育に影響を及ぼす因子を検討した。母親の非妊時体重と非妊時BMIは,週あたりの児の体重増加量(非妊時体重:r=0.42,p<0.05,非妊時BMI:r=0.41,p<0.05),および週あたりの胸囲増加量と有意な正相関を示した。児の体重増加量は,週あたりの母親体重増加量と有意な関連を示さなかったが,週あたりの母親実質体重増加量と有意な正相関を示した(r=0.50,p<0.01)。結論:胎児発育は,妊娠前の母親の栄養状態,および妊娠中の母親白身の栄養状態を意味する実質体重増加に依存し,妊娠可能年齢女性の妊娠前からの栄養・体重管理と,妊娠中の母親の十分な栄養摂取に基づく代謝環境の形成は,良好な胎児の発育のために極めて重要である。
著者
須田 力 河口 明人 森田 勲
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
no.97, pp.1-25, 2005

豪雪地住民の冬季の身体活動の実態を明らかにし在宅での自発的なトレーニングによる体力の変化を検討するため,豪雪地帯の栗沢町,特別豪雪地帯の三笠市および士別市の中高年者を対象に,運動実施記録による調査(三笠市および士別市),無雪期及び積雪期の生活における身体活動の強度測定(三笠市),降雪始めと降雪終了期の2回の体力測定(3地域)を行った結果,⑴除雪の運動時間が歩行を上回ること,⑵無雪期の畑仕事,歩行,積雪期の歩行よりも除雪の運動強度が酸素摂取量,心拍数とも高いこと,⑶降雪始めに対して降雪終了期には男女共6分間歩行において有意な向上を示し,全般的に体力が向上したものの血圧値が増加傾向を示すなど,豪雪地域特有の特徴が浮き彫りにされた。これらの結果から,冬季間は運動不足により体力が低下するという問題が必ずしも妥当しない現実と除雪の効果と問題点を考慮した運動指導の必要性が明らかとなった。
著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.69-103, 2013-12-25

Public health has been the foundation to the development of modern civil society, where humanlife and health qualify as fundamental human rights. Both individual and science are importantkeywords for understanding the process of building citizenship in modern society;they areassociated with Reformation and Scientific Revolution, which have played pivotal roles in theformation of individualism and scientific epistemology. Calvinists, more than Lutherans, developedindividualism by their self-assurance based on religious doctrines, and attempted at changingsociety through religious struggles based on the ideology of so cial justice. Simultaneously, ScientificRevolution, along with Reformation, upset Catholic authority in terms of certain paradigm shifts,such as a sun-centered solar system and the human anatomy. Both of these revolutionary changesinteracted philosophically to build modern citizenship based on epistemological transformations.Society found out natural right of public, who became convinced in the human right that “everysingle human life should be preserved,” which motivated the modern social movement on publichealth.
著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.163-196, 2010-12-25

ポリスの存続という至上命題の中で,古代ギリシャ人が人間の身体に抱いていた観念は,精神と乖離した二元論的な理解ではなく,彼らの生存の内的欲求を意義づけるエートス(ethos)と一体のものであった。貴族文化の余韻をとどめながらも,人間の内面は身体に表現されることを確信し,その身体を創造せんとする卓越性(アレテー)の概念と結びつき,戦士共同体における生命のアイデンティティを構成することにって,ギリシャ文化や文明をもたらした主要な源泉となった。死すべき運命を悼みながら,その反映としての不滅の栄光を保障する卓越した勇気の顕現を,ポリス間の絶えざる戦闘という不幸の中で具現しようとしたギリシャ人は,英雄精神によって不死の神に至らんとする飽くなき憧憬を抱き続け,鍛錬された身体的能力と,限りない自己啓発を希求する精神的能力の渾然一体化した「カロカガティア」という,人間のありうべき理想像に関する概念的遺産を今日に伝える。
著者
河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
no.111, pp.163-196, 2010

ポリスの存続という至上命題の中で,古代ギリシャ人が人間の身体に抱いていた観念は,精神と乖離した二元論的な理解ではなく,彼らの生存の内的欲求を意義づけるエートス(ethos)と一体のものであった。貴族文化の余韻をとどめながらも,人間の内面は身体に表現されることを確信し,その身体を創造せんとする卓越性(アレテー)の概念と結びつき,戦士共同体における生命のアイデンティティを構成することにって,ギリシャ文化や文明をもたらした主要な源泉となった。死すべき運命を悼みながら,その反映としての不滅の栄光を保障する卓越した勇気の顕現を,ポリス間の絶えざる戦闘という不幸の中で具現しようとしたギリシャ人は,英雄精神によって不死の神に至らんとする飽くなき憧憬を抱き続け,鍛錬された身体的能力と,限りない自己啓発を希求する精神的能力の渾然一体化した「カロカガティア」という,人間のありうべき理想像に関する概念的遺産を今日に伝える。
著者
須田 力 河口 明人 森田 勲
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

豪雪地住民は、冬季に雪道歩行や除雪のようなきつい作業があるにもかかわらず冬季間不活動になり勝ちとなる。本研究は、(1)身体活動の運動強度の測定、(2)中・高年の人たちの生活機能を高める在宅トレーニングの介入研究、(3)筋力トレーニングと有酸素運動のための簡易で安価な在宅トレーニング用具の開発、を行った。主な知見は以下の通りである。1.雪上路面の歩行や除雪のような冬季の身体活動の酸素需要量は、無雪期よりも多くなる。2.運動介入は、栗沢町、三笠市、士別市の中・高年者110名に対して、積雪期入りの第一回の測定時における運動ガイダンス、参加者へのダイレクト・メールによる運動の奨励、カレンダーによる運動と健康づくりの情報提供によるものであった。冬季明けの第2回目の測定に参加した男性25名において、握力、上体起こし、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行およびADL得点に、女性20名において6分間歩行に有意な向上を示した。しかしながら、安静時血圧は収縮期、拡張期とも冬季間で上昇する傾向が見られた。3.ステップエクササイズ用にステップ数がカウントされる装置を、スイッチング・センサーと安価な電卓を利用して試作した。ゴムチューブ、座椅子、ディジタル体重計を使用して簡易な脚筋力用具を試作した。これらの用具は、運動実施者が歩行距離、ステップ昇降高さ、発揮した筋力をモニターできるため、冬季の在宅トレーニングに有用と考える。