著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.134-141, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】食費に対する態度の変容による食生活改善の可能性を探ることを目指し,食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生の特徴,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度と食費に対する態度を検討した。【方法】2018年11月,女子大学生1,388人を対象に,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,食費に対する態度,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度であった。χ2 検定,Kruskal-Wallis検定,Mann-WhitneyのU検定,ロジスティック回帰分析を用いて,食費に対する態度別に属性,主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度を検討した。【結果】541人が回答し(回収率39.0%),対象外であった大学院生や回答不備の者を除き,483人を解析対象とした(解析対象率34.8%)。食費に「お金を掛けることは惜しまない」者は,管理栄養士養成課程の者(p=0.013),暮らし向きにゆとりがある者が多かった(p<0.001)。ロジスティック回帰分析で,これら属性を調整した結果,食費に「お金を掛けることは惜しまない」者より,「お金を掛けたいが,ゆとりがない」者の主食・主菜・副菜の揃った食事の摂取頻度が低かった(オッズ比[95%信頼区間]=0.46[0.24~0.87])。【結論】食費に「お金を掛けることは惜しまない」女子大学生は,より健康的な食生活を送っていることが示唆された。
著者
河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.254-263, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【目的】植物性食品を中心とした食事パターンに関する研究の基礎資料とするために,先行研究で開発された「植物性食品指数」をわが国の女子大学生の食事調査データに適用し,各指数と栄養素等摂取量・Body Mass Index(BMI)との関連を示すことを目的とした。【方法】女子大学生281名を対象に,簡易型自記式食事歴法質問票から得た食物摂取頻度及びエネルギー・栄養素等摂取量のデータを用いて,「総植物性食品指数」「健康な植物性食品指数」「不健康な植物性食品指数」を算出した。これらの指数と,エネルギー及び栄養密度法で示した栄養素等摂取量,BMIとの相関係数を算出した。【結果】対象者のBMIの中央値(四分位範囲)は20.0(18.8,21.2)kg/m2 だった。健康な植物性食品指数と,コレステロールを除く全ての微量栄養素の摂取量との間に正の相関がみられた(ρ=0.147~0.645, p<0.050)。一方,不健康な植物性食品指数と,植物性脂質エネルギー比と飽和脂肪酸エネルギー比を除く全ての微量栄養素の摂取量との間に負の相関がみられた(ρ=-0.718~-0.127, p<0.050)。3指数とBMIとの間に相関関係はみられなかった。【結論】健康な植物性食品指数が高い程,多くの栄養摂取状況が良好だった一方,不健康な植物性食品指数が高い程,エネルギー摂取量や多くの栄養素等摂取量が不足していた。
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.239-245, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
22

【目的】女子大学生の野菜摂取量増加に向けて,居住形態別に野菜摂取量,栄養素等摂取量を比較し,野菜摂取量と野菜摂取のセルフ・エフィカシー(以下,SE)の関連を検討すること。【方法】女子大学生218人を対象に行った簡易型自記式食事歴法質問票による野菜摂取量,栄養素等摂取量と,属性,野菜摂取のSEの回答を使用した。χ2 検定,Mann-WhitneyのU検定を用いて,居住形態別に属性,野菜,栄養素等摂取量を比較し,Spearmanの相関係数を用いて,野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連を検討した。【結果】一人暮らしの者は80人(36.7%),家族・その他と同居の者は138人(63.3%)であった。一人暮らしの者は野菜,栄養素等摂取量のほとんどの項目で家族・その他と同居の者より摂取量が低かった(すべてp<0.05)。居住形態別にみた総野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連は,一人暮らしの者では中程度の正の相関がみられ(rs=0.60,p<0.001),同居の者では弱い正の相関がみられた(rs=0.27,p=0.032)。【結論】一人暮らしの女子大学生の野菜摂取量と栄養素等摂取量は家族等と同居の者と比較し,低かった。また,野菜摂取のSEを高めることは,一人暮らしの者の野菜摂取量の向上に活用できる可能性が示唆された。
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.331-337, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
20

【目的】近年,食生活の課題に対してマインドフルイーティング(以下,ME)というアプローチが注目されている。本研究では,拡張されたME(以下,EME)から食生活改善の可能性を探るため,EMEを実践する女子大学生の特徴,主食・主菜・副菜を組み合わせた食事(以下,栄養バランスの良い食事)の摂取頻度を検討した。【方法】2018年11月,女子大学生1,388人を対象に自記式質問紙調査を実施し,属性,EME尺度,栄養バランスの良い食事の摂取頻度の項目を使用した。EME尺度の下位尺度の平均得点に基づき階層的クラスター分析を行い,クラスターごとにχ2 検定,Kruskal-Wallis検定,ロジスティック回帰分析を用いて,属性,栄養バランスの良い食事の摂取頻度を検討した。【結果】482人(34.7%)を解析対象者とした。EME非実践型(14.1%),ME非実践型(36.9%),ME実践型(25.3%),EME実践型(23.7%)の4つに分類され,属性に有意差はみられなかった。属性を調整したロジスティック回帰分析の結果,EME非実践型に比べてEME実践型の栄養バランスの良い食事の摂取頻度が高かった(オッズ比[95%信頼区間]=3.05[1.50~6.22])。【結論】本研究の結果から,環境への配慮や食への感謝の気持ちを持つ者は栄養バランスの良い食事の頻度が高いことが示された。
著者
河嵜 唯衣 赤松 利恵 酒井 雅司 藤原 恵子 玉浦 有紀
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.175-184, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
29

【目的】高齢の入院患者等の栄養管理に関する看護・介護職員の態度尺度(The Staff Attitudes to Nutritional Nursing Geriatric Care Scale: SANN-G)の日本語版を作成し,妥当性・信頼性を評価すること。【方法】日本語に翻訳したSANN-G18項目を用いて,自記式質問紙調査を実施し,都内の病院及び介護老人保健施設に勤務する看護師・看護助手及び介護士計493名が回答した。1か月後,回答者のうち108名を対象に再調査を実施した。構成概念妥当性,基準関連妥当性,内部一貫性及び再現信頼性を検討した。【結果】490名を解析対象とした(適格率99.4%)。探索的因子分析の結果,2因子10項目が得られ,確証的因子分析の適合度指標も良好な値が得られた。10項目のクロンバックαは0.733であり,初回調査と再調査の合計得点の相関係数は,ρ=0.628(p<0.001)だった。基準関連妥当性の検討では,栄養管理の知識,栄養管理より優先される業務負荷及び入院患者等の栄養管理に関する情報共有との相関係数は,それぞれρ=-0.021(p=0.639),0.158(p<0.001),0.176(p<0.001)だった。【結論】SANN-G日本語版は,原版の因子構造とは異なっていたものの,妥当性・信頼性が確認された。
著者
小池 恭子 河嵜 唯衣 玉浦 有紀 赤松 利恵 酒井 雅司 藤原 恵子 鈴木 順子 西村 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.130-137, 2018-10-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
26

【目的】保存期慢性腎臓病(CKD)患者において,食事療法に対する意思決定バランスを属性ごとに比較する。【方法】2016年2月~9月,都内1病院に通院するCKD患者54名を対象とし,食事療法に対する有益性,障害の項目を含む質問紙調査を実施した。初めに,各項目の人数分布を算出した。その後,有益性,障害の合計得点と性別,年齢,BMI,eGFR,糖尿病既往歴,調理担当者の項目でMann–Whitney U検定を用いて比較した。合計得点で有意差もしくは有意傾向のみられた属性は,各項目で得点を比較した。【結果】対象者54名中,男性は27名(50.0%)であった。有益性,障害の各々の合計得点と属性を比較した結果,有益性では有意差はみられなかったが,障害では,性別と調理担当者の2つの属性で,合計得点と有意差もしくは有意傾向がみられた(各々p=0.034,p=0.057)。障害の項目別では,「食事療法を行うと,食事の準備や選択に手間がかかる」の項目で性別に有意差がみられ,女性(2.0(2.0,4.0)点)よりも男性(4.0(3.0,5.0)点)の方が(各々中央値(25,75%タイル値)),食事の準備や選択に手間がかかると回答していた(p=0.02)。【結論】保存期CKD患者において,食事療法に対する有益性では属性による差はないが,障害では性別や調理担当者により捉え方が異なることが示唆された。