著者
河村 優詞
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.71-77, 2019

<p><b>研究の目的</b> 特別支援学級の児童における漢字の筆記学習において、自己評価・他者評価が正確な書字行動に及ぼす影響を検証した。<b>研究計画</b> ABACフォローアップおよびABフォローアップデザインを用いた。<b>場面</b> 小学校内の特別支援学級の教室で授業として実施した。<b>参加者</b> 特別支援学級に在籍する児童(N=5)であった。<b>独立変数の操作</b> 自己評価の有無(介入Ⅰ)、および自己評価・教師評価とその一致に対する評価の有無(介入Ⅱ)であった。<b>行動の指標</b> 薄い灰色の線をなぞって書くトレース課題において、線からはみ出して筆記した画数の割合を算出した。<b>結果</b> 介入Ⅰにおいて教示期でははみ出しの減少が見られなかったが、自己評価期には大きく減少した。しかし自己評価をやめると再度はみ出しが増加し、自己評価が不正確であるケースもあった。介入Ⅱでは自己評価・教師による他者評価を実施したが、1名を除き介入開始後にはみ出しは減少し、介入終了後も増加しなかった。<b>結論</b> 自己・他者評価を含む介入は現場で実践しやすく、正確な書字行動を促しうる方法であると考えられる。ただし、介入効果の小さい児童も存在していたため、教授法のさらなる改善が必要である。</p>
著者
河村 優詞
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.15-22, 2019-09-30 (Released:2020-09-30)
参考文献数
29
被引用文献数
3

研究の目的:特別支援学級在籍児童の漢字学習において、5種類の学習方法が漢字の書字獲得に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。研究計画:操作交代デザインを使用した。場面:小学校の教室で実施した。参加者:特別支援学級に在籍する7名の児童であった。独立変数の操作:空中に指で漢字を書く「空書きによる同時再生」、紙面に指で漢字を書く「指書きによる同時再生」、薄い灰色の線を鉛筆でなぞる「同時再生+薄線プロンプト」、手本を鉛筆で書き写す「同時再生」、手本を隠して鉛筆で書く「遅延再生」の5種類の学習方法を5試行ごとに交代で実施した。学習は1日につき漢字三つであり、一つの漢字につき5回ずつ筆記させた。行動の指標:学習直後、翌日、1週間後の書きテストにおける再生成績を比較した。結果:同時再生よりも遅延再生の再生成績が高いことが多かった。同時再生+薄線プロンプトでは同時再生よりも再生成績が低いケースがあった。空書き及び指書きによる同時再生の再生成績は低いことが多かった。結論:漢字を一時的に記憶して筆記することが有効であった。書字獲得に対する筆跡のフィードバックの重要性が示唆された。しかし、全学習方法で1日~1週間程度たつと大きく再生成績が低下することが多く、課題として残った。
著者
河村 優詞
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-55, 2018-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
30

研究の目的:小学校の特別支援学級に在籍する児童に対する漢字の筆順指導において、色・数字刺激による指導の効果を明らかにすることであった。研究計画:A-B-プローブデザインを使用した。場面:小学校の教室で実施した。対象児童:特別支援学級に在籍する児童(介入1:6 名、介入2:4 名)であった。独立変数の操作:介入1 では色・数字で筆順を示した薄い色の線を鉛筆でなぞる学習を行わせた。介入2では、プリントに色・数字で筆順を示した見本を付し、空白のマスに筆記させた。行動の指標:正確な筆順で書けた漢字の数をカウントした。結果:介入1、2 ともに正しい筆順で書けた漢字の数が増加した。介入1では同じ構成要素をもつ他の漢字に筆順の汎化が見られた。介入2では筆順が他の筆順に干渉し、誤答となった可能性のあるケースが見られた。結論:色と数字は視覚的且つ弁別が容易な刺激であり、有効な筆順指導の方法であると考えられた。筆順の汎化や干渉を踏まえ、指導する順序に配慮が必要なケースがあると考えられた。
著者
河村 優詞
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-55, 2018

<p>研究の目的:小学校の特別支援学級に在籍する児童に対する漢字の筆順指導において、色・数字刺激による指導の効果を明らかにすることであった。研究計画:A-B-プローブデザインを使用した。場面:小学校の教室で実施した。対象児童:特別支援学級に在籍する児童(介入1:6 名、介入2:4 名)であった。独立変数の操作:介入1 では色・数字で筆順を示した薄い色の線を鉛筆でなぞる学習を行わせた。介入2では、プリントに色・数字で筆順を示した見本を付し、空白のマスに筆記させた。行動の指標:正確な筆順で書けた漢字の数をカウントした。結果:介入1、2 ともに正しい筆順で書けた漢字の数が増加した。介入1では同じ構成要素をもつ他の漢字に筆順の汎化が見られた。介入2では筆順が他の筆順に干渉し、誤答となった可能性のあるケースが見られた。結論:色と数字は視覚的且つ弁別が容易な刺激であり、有効な筆順指導の方法であると考えられた。筆順の汎化や干渉を踏まえ、指導する順序に配慮が必要なケースがあると考えられた。</p>
著者
河村 優詞
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.102-109, 2019

<p><b>研究の目的</b> 知的障害特別支援学級在籍児童において、漢字学習への選好に及ぼす要因を検討することを目的とした。研究Ⅰでは低選好課題の後に高選好課題を行う場合の選好傾向を、研究Ⅱでは低選好課題の後に課題の選択機会がある場合の選好傾向を検討した。<b>研究計画</b> 学習課題間の選好査定を実施した。研究Ⅰでは低選好課題のみを行うプリントと低選好課題の後に高選好課題を行うプリントを児童に選ばせた。研究Ⅱでは低選好課題の後に課題の選択機会のあるプリントと選択機会の無いプリントを児童に選ばせた。<b>場面</b> 小学校の教室で実施した。<b>参加児</b> 特別支援学級に在籍する4名の児童であった。<b>独立変数の操作</b> 高選好課題の有無(研究Ⅰ)および選択機会の有無(研究Ⅱ)であった。<b>行動の指標</b> 各プリントに対する参加児の選択を指標とした。<b>結果</b> 研究Ⅰでは低選好課題の学習量が多くても、高選好課題を含むプリントが選好された。研究Ⅱにおいて一部の参加児では、低選好課題の学習量が多くても選択機会のあるプリントが選好された。<b>結論</b> 課題選択の傾向から高選好課題や選択機会が強化子として機能した可能性のあるケースが存在した。しかし、厳密に強化子として機能したか否かは検証できておらず、今後の課題として残された。</p>