著者
河村 弘
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.6_32-6_38, 2015-06-01 (Released:2015-10-02)
参考文献数
10
著者
河村 弘祐
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.207-237, 2004-03-19

フィアロンはゲーム理論のモデルを用いて,コミットメント問題を定式化し,国内紛争の勃発する論理構造の一つを明確化した.しかし,このモデルでは緊張は生じるが大規模な暴力化に発展しないような紛争回避の論理を考えるには不十分である.本論文ではいかにコミットメント問題は解消されるのか,すなわち,暴力化がいかに回避されるのか,という問題関心も含めて国内紛争の勃発と回避の過程について考察する.初めに,外部褒賞という変数を加えた修正モデルを提示し,その働きによりコミットメントの信頼性が担保され,紛争が回避されるという論理構造を示す.次に,ともに旧ユーゴスラヴィア連邦から独立したクロアチアとマケドニアという二つの事例にモデルを当てはめ,比較,分析する.独立に伴い両国とも深刻な民族問題を抱えていたが,クロアチアでは国内紛争に発展し,マケドニアでは大規模な暴力化を免れてきた.同様にコミットメント問題を抱えていた両国に差異をもたらした一つの説明として,外部褒賞の効果に注目する.