著者
西口 亮太 田方 俊輔 陰山 建太郎 泉 典洋 関根 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.30-41, 2020 (Released:2020-05-20)
参考文献数
22

気象予測のデータ同化手法として予測精度向上に貢献している随伴変数法を用いて,河川流解析における計算条件の逆解析を示した.一次元不定流を対象に随伴方程式・感度を導出し,数値計算方法を示した上で実河川における適用性を検証した.多点水位情報を用いたデータ同化により任意地点の流量を推定可能であることを示し,水位計の基数によって精度が変化することを確認した.また,河道網を対象とした場合も同様に同化精度が高いことを示した.さらに,それを初期値とした予測計算により,2時間先までの高精度な予測水位が得られた.次に,その手法を河道形状の最適化に適用した.水位を堤防高以下とする河道形状について,河床掘削と河道拡幅の2ケースの最適化を行い,1回の計算で最適形状を決定可能であることを示した.
著者
清水 康行 馬場 仁志 泉 典洋 関根 正人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.混合粒径の材料で構成された一様湾曲流路が外岸方向ヘシフトしていく過程に関する数値計算モデルの構築を行った.流路の変動とリンクする形で土砂の分級が生じ,内岸側に細流土砂が堆積することでテラス状の地形ができることを確認し,考察を行った.2.1999年8月に発生した阿武隈川洪水の後,福島盆地下流端の梁川橋付近の河川敷において現地観測を実施し洪水による高水敷上への細粒土砂分の堆積量を調べた.それによると堆積している土砂は0.1mm程度の通常はウォッシュロードと呼ばれるような非常に細かい砂であり,低水路側から堤防側に行くにつれて粒径が小さくなっていることがわかった.また堆積のピークは低水路から10m程度離れたところに流れと平行方向に帯状に分布していることが明らかとなった.これによって洪水時に輸送される浮遊砂あるいはウォッシュロードの堆積が洪水敷の発達及び川幅維持に大きな影響を与えていることが示唆された.3.混合粒径河道で、緩やかに蛇行している実河川(一級河川鵡川、穂別橋地点)において、融雪期と夏期の洪水観測を行い、掃流砂および浮遊砂の移動実態を観測した。流速についても、ADCPを用いた洪水中の観測に初めて成功し、蛇行による二次流の発生を3次元的にとらえることができた。4.粘性河岸による自由蛇行の模型実験を行い,河床および河岸材料に粘性土が混入した場合の耐侵食性および河岸侵食形態の変化について考察を行った.5.河床と河岸の両方の変化を同時に扱うことが可能な数値計算モデルの開癸を行った.計算モデルの検証は,自由蛇行の模型実験を用いて行った.この結果,計算モデルは実験結果における,河岸侵食を伴った自由蛇行の時間経過を精度良く再現可能であることが示され,砂質河道の自由蛇行を定量的に解析可能なモデルであることが確かめられた.
著者
泉 典洋 渦岡 良介 風間 聡
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

表面流によって侵食と堆積を受ける平坦な斜面上に,規則的な間隔で発生する水路群(ガリ群)の形成理論を提案するとともに,理論を任意形状の斜面に拡張し,形状に関わらず水深の1000倍程度の間隔で水路群が形成されることを示した.また水路分岐の物理モデルを提案し,周囲から集まる流量が減少すると,水路頭部は擾乱に対して不安定となり分岐することを明らかにした.この結果は宗谷丘陵における現地観測によって裏付けられ,水路形成には地下水や斜面崩落も重要であることが判った.浸透流によって斜面下流端に発生する水路群の形成過程を明らかにするために模型実験を行い,水路間隔を決定する要因は流量および斜面勾配,浸透層厚であり,それらが大きくなると水路間隔も大きくなることを明らかにした.地震で発生した斜面崩壊について現地調査および室内土質試験を実施し,地すべり発生時の地盤状況,崩壊土の物理的・力学的特性が明らかとなった.また,流体解析を用いて崩壊土砂の移動量を再現した.斜面のような不飽和地盤における3相系(土骨格・間隙水・間隙空気)の動的・大変形挙動を解析的に明らかにするために,多孔質・有限変形理論に基づいた有限要素解析手法を提案し,不飽和地盤の自重・圧密・浸透・動的解析を行い,不飽和地盤である斜面の外力による崩壊過程を明らかにした.Dev確率分布を用いて求めた極値降雨再現期間の空間分布から東北地方を例に斜面災害発生確率の空間分布を求めた.さらに土砂災害実績を利用して融雪に起因する土砂災害発生確率モデルおよびリスクモデルを構築するとともに結果を分布図として示し,実績と良好に整合することを示した.また多雪年および小雪年,温暖化の場合について,時系列的な融雪変化による土砂災害のリスク変化を示した.さらに,土砂崩壊発生確率モデルと経済損失額モデルを用いて,土砂災害リスクの地域分布を明らかにした.