- 著者
-
泉 典洋
渦岡 良介
風間 聡
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
表面流によって侵食と堆積を受ける平坦な斜面上に,規則的な間隔で発生する水路群(ガリ群)の形成理論を提案するとともに,理論を任意形状の斜面に拡張し,形状に関わらず水深の1000倍程度の間隔で水路群が形成されることを示した.また水路分岐の物理モデルを提案し,周囲から集まる流量が減少すると,水路頭部は擾乱に対して不安定となり分岐することを明らかにした.この結果は宗谷丘陵における現地観測によって裏付けられ,水路形成には地下水や斜面崩落も重要であることが判った.浸透流によって斜面下流端に発生する水路群の形成過程を明らかにするために模型実験を行い,水路間隔を決定する要因は流量および斜面勾配,浸透層厚であり,それらが大きくなると水路間隔も大きくなることを明らかにした.地震で発生した斜面崩壊について現地調査および室内土質試験を実施し,地すべり発生時の地盤状況,崩壊土の物理的・力学的特性が明らかとなった.また,流体解析を用いて崩壊土砂の移動量を再現した.斜面のような不飽和地盤における3相系(土骨格・間隙水・間隙空気)の動的・大変形挙動を解析的に明らかにするために,多孔質・有限変形理論に基づいた有限要素解析手法を提案し,不飽和地盤の自重・圧密・浸透・動的解析を行い,不飽和地盤である斜面の外力による崩壊過程を明らかにした.Dev確率分布を用いて求めた極値降雨再現期間の空間分布から東北地方を例に斜面災害発生確率の空間分布を求めた.さらに土砂災害実績を利用して融雪に起因する土砂災害発生確率モデルおよびリスクモデルを構築するとともに結果を分布図として示し,実績と良好に整合することを示した.また多雪年および小雪年,温暖化の場合について,時系列的な融雪変化による土砂災害のリスク変化を示した.さらに,土砂崩壊発生確率モデルと経済損失額モデルを用いて,土砂災害リスクの地域分布を明らかにした.