著者
泉 友則
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

トランスグルタミナーゼを介したβ_2-グリコプロテインI(β_2GPI)の架橋反応について、β_2GPI分子に存在する4つのグルタミン残基について各々を含む4種のペプチドを合成し試験管内での二量体化反応に対する阻害効果を検討した。過剰量の5-ビオチンアミドペンチルアミン(BAPA)存在下ではTGおよびFXIII、両酵素による二量体化が抑制されたのに対して、合成ペプチドは4種のうち、1つのみが組織トランスグルタミナーゼ(TG)による二量体化を選択的に抑制した。次に無血清条件下で24時間培養したヒト血管内皮細胞(HUVEC)におけるβ_2GPIの架橋反応を培地、付着細胞、浮遊細胞/リポソームの3画分それぞれについてウエスタンブロットにより解析した。浮遊細胞/リポソーム画分に分子量100kDaのバンドが強く認められ、このバンドの生成はトランスグルタミナーゼの阻害剤(シスタミン)の添加、また過剰量のBAPA存在下で強く抑制された。さらに、HUVECでの架橋反応における抗リン脂質抗体の効果を解析した。健常人由来IgGは架橋反応に影響を与えなかったが、これまでに特徴づけを行った抗リン脂質抗体患者由来のIgGの添加により、浮遊細胞/リポソーム画分中の架橋生成物量は顕著に増加した。以上の結果から、以下の可能性が示唆された。(1)β_2GPIはTGの特異的な基質の1つで、(2)その架橋反応は例えば内皮細胞の損傷や修復にともなって進行する。(3)抗リン脂質抗体は架橋反応、あるいは架橋生成物の膜上への結合を増強することでその生理的な機能を撹乱する。
著者
小泉 友則
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.153-188, 2016-06

現代日本において、子どもの性をよりよい方向に導くために、子どもに「正しい」性知識を教えなければならない・もしくはその他の教育的導きがなされねばならないとする"性教育"論は、なじみ深い存在となっている。そして、このような"性教育論"の起源がどこにあるのかを探求する試みは、すでに多くの研究者が着手しているものでもある。しかしながら、先行研究の歴史記述は浅いものが多く、日本において"性教育"論が誕生したことがいかなる文化的現象だったのかは多くの部分が不明瞭なままである。そこで、本稿では先行研究の視点を引き継ぎつつも"性教育"論の歴史の再構成を試みる。 具体的には、現状最も優れた先行研究である茂木輝順の論稿の批判検討を通じて、歴史記述を行う。取り扱う時期を近世後期~明治後期に設定し、"性教育"論の源流の存在と誕生を追っていく。 日本においては、近世後期にすでに"性教育"論の源流とも言える教育論は存在し、ただ、それはその後の時代の"性教育"論と比すると、不完全なものであった。近代西洋の知の流入は、そうした日本の"性教育"論の源流の知に様々な新規な知識を付け加えていく。そのような過程のなかで、"性教育"論は明確なかたちで誕生していくわけであるが、その誕生の過程では、舶来物の知識と従来の日本における文化との摩擦もあり、その摩擦を解消するためには"性教育"論を学術的なものだと見做す力が必要だった。 その摩擦をひとまず解消し、"性教育"論が日本において確立するのは、明治期が終わりを迎えるころであった。その時期には、「性教育」という名称が出現し、"性教育論"の要素を占める主要な教育論も出そろい、社会的な認知や承認も十分に備わっていた。
著者
小泉 友則
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.153-188, 2016-06-30

現代日本において、子どもの性をよりよい方向に導くために、子どもに「正しい」性知識を教えなければならない・もしくはその他の教育的導きがなされねばならないとする“性教育”論は、なじみ深い存在となっている。そして、このような“性教育論”の起源がどこにあるのかを探求する試みは、すでに多くの研究者が着手しているものでもある。しかしながら、先行研究の歴史記述は浅いものが多く、日本において“性教育”論が誕生したことがいかなる文化的現象だったのかは多くの部分が不明瞭なままである。そこで、本稿では先行研究の視点を引き継ぎつつも“性教育”論の歴史の再構成を試みる。
著者
泉 友則
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

組織損傷時に様々な細胞内タンパク質が漏出するが、細胞外での機能的影響の多くは不明である。細胞外で機能し、細胞応答に影響を与える細胞内タンパク質を特徴づけるために、細胞表面標識と質量分析に基づく同定技術を用いて、細胞表面結合タンパク質を選択的に解析した。U937細胞表面から405種類の細胞内タンパク質を含む計454種類のタンパク質を同定した。これらのサブセットには、様々な高含量タンパク質に加えて、HMGB1などの臨床マーカーも含まれていた。405種類中、162種類については、損傷時にHEK293細胞から漏出することが明らかになり、特定のタンパク質については、シグナル伝達経路への影響も確認された。