著者
津曲 俊太郎 森 里美 石津 博子 田中 裕 岡本 義久 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.211-218, 2018 (Released:2018-05-17)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【目的】近年,カバノキ花粉などによる花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)のために,多品目の果物・野菜の摂取に伴う口腔アレルギー症候群(OAS)の発症が全国的に増加している.当科では,PFASの根治を目指して輸入品のシラカバ花粉エキスを含む皮下免疫療法(SCIT)を2011年より実施している.これまで実施した成績をまとめて検討・報告する.【方法】2011年8月~2016年8月に男児9名,女児10名の計19名(6~16歳;平均11.8歳)に実施した.シラカバ特異的IgE値は全例陽性であった(中央値91.9UA/mL).SCITは入院のうえ急速法で導入し,維持期は4~8週間隔で外来での接種を継続している.症例により他抗原も同時に接種した.急速期前後で経口負荷試験を行い,その後の摂取状況についても調査した.【結果】急速期直後では5名にOAS症状の著明改善,9名に改善を認めた.2名は変化なし,3名は評価不能だったが,うち4名は維持期に症状の改善を認めた.維持期経過中に3名でOAS症状の再燃を認めたが,計15名(79%)で著明改善あるいは改善を認め,高い有効性を示した.中止・脱落例は認めなかった.【結論】PFASによるOASは基本的には自然寛解が期待できないとされている.果物・野菜と交差反応性のある花粉の免疫療法を行うことでOAS症状の改善が期待でき,OASの有効な治療法になると考えられる.
著者
田中 裕 杉原 麻理恵 津曲 俊太郎 高松 伸枝 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1015, 2017

<p>症例は12歳の女児.食物摂取後の運動負荷によるアナフィラキシー症状を繰り返したため, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIAn)を疑い原因食物の精査を行った.症状誘発時に摂取頻度の高かった卵・乳・大豆と, FDEIAnの原因食物として頻度の高い小麦について, それぞれの食物摂取後の運動負荷試験を施行したが全て陰性であった.詳細な問診から4回のエピソードで温州みかんを摂取していたことや, 同じ柑橘類であるオレンジ・グレープフルーツの特異的IgEが陽性であったこと, スキンプリックテスト(skin prick test, SPT)が陽性であったことから温州みかんを原因食物として疑い, アスピリンを併用した温州みかん摂取後の運動負荷試験を行ったところアナフィラキシー症状が誘発されたため, 温州みかんによるFDEIAnと診断した.多数の柑橘類でSPT陽性を示したため柑橘類の完全除去を指示したところ, それ以後アナフィラキシー症状は認めていない.FDEIAnの原因食物として柑橘類も認識しておく必要がある.</p>
著者
津曲 俊太郎
出版者
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

リンゴ、モモなどバラ科果物を中心とした果物アレルギーは自然寛解の可能性が低く現時点では確立した治療法がない。我々は先行研究でバラ科果物アレルギーに対するシラカバ花粉アレルゲンを用いた皮下免疫療法を実施し79%で臨床的有効性を示したが、治療効果を評価する経口負荷試験が煩雑で難しいことを実感した。本研究では、より生体の反応に近く食物アレルギー臨床症状と一致性の高い末梢血好塩基球活性化検査を利用して本治療法の有効性を客観的に評価するとともに、長期観察による寛解へのメカニズムの解明を目的とする。最終的には治療プロトコールを確立し本治療法がバラ科果物アレルギーの根治療法として今後普及することを目指す。
著者
田中 裕 杉原 麻理恵 津曲 俊太郎 高松 伸枝 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1015, 2017 (Released:2017-09-14)
参考文献数
26

症例は12歳の女児.食物摂取後の運動負荷によるアナフィラキシー症状を繰り返したため, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIAn)を疑い原因食物の精査を行った.症状誘発時に摂取頻度の高かった卵・乳・大豆と, FDEIAnの原因食物として頻度の高い小麦について, それぞれの食物摂取後の運動負荷試験を施行したが全て陰性であった.詳細な問診から4回のエピソードで温州みかんを摂取していたことや, 同じ柑橘類であるオレンジ・グレープフルーツの特異的IgEが陽性であったこと, スキンプリックテスト(skin prick test, SPT)が陽性であったことから温州みかんを原因食物として疑い, アスピリンを併用した温州みかん摂取後の運動負荷試験を行ったところアナフィラキシー症状が誘発されたため, 温州みかんによるFDEIAnと診断した.多数の柑橘類でSPT陽性を示したため柑橘類の完全除去を指示したところ, それ以後アナフィラキシー症状は認めていない.FDEIAnの原因食物として柑橘類も認識しておく必要がある.