著者
木村 由佳 石橋 恭之 津田 英一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.784-790, 2019-10-18 (Released:2019-12-02)
参考文献数
14

膝前十字靱帯(ACL)損傷は大多数がスポーツ活動中に発生する.治療としては,再建術が行われており,近年,手術手技には種々の改良が加えられ,安定した術後成績が期待できるようになった.一方で,スポーツ復帰後の再損傷やパフォーマンスの回復など,安全なスポーツ復帰という点に関しては,いまだ解決されていない課題が残されている.再損傷には複数の因子の関連が考えられているが,危険因子の1つとして不良な神経筋コントロール機能が,術後も長期間にわたり継続していることが指摘されている.不良な動作パターンは介入を行うことで修正可能であると考えられ,再損傷の予防を考慮したリハビリテーション治療が重要である.
著者
津田 英一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.740-745, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

骨格筋は身体運動を行うための最終的な出力器官としての役割を担っている.その最小単位は筋原線維を構成する筋節であり,収縮タンパク質であるミオシンとアクチン間で滑走が生じることで筋は収縮する.筋に発生する張力はその生理的断面積と,筋収縮速度はその筋長と相関し,筋の基本的な機能的特性を決定づける.臨床的に測定される筋力は,関節運動によって発生するモーメントによって提示されることが多く,筋張力以外にも関節の構造や屈曲角度の影響を受ける.筋力増強にはさまざまな原則や特異性が存在するため,それらを十分理解したうえで処方することが効率よく増強効果を得るために必要である.
著者
津田 英一 藤 哲 石橋 恭之 岡村 良久 小松 尚 佐藤 英樹
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は膝前十字靭帯損傷受傷の危険因子を解明し,それを元に予防に有効なトレーニングプログラムを作成し,その効果を評価することを目的としています.本年度の目標は,本プロジェクトの最も基礎となる危険因子の解明のために,フィールドワークを行いスポーツ選手の身体的特徴,運動能力などのデータを採取することでした.昨年度に行った予備調査によって決定した調査項目1)全身関節弛緩性,2)膝関節前方安定性,3)Q角,4)関節位置覚,5)大腿四頭筋・ハムストリング等尺性筋力,6)バランス機能,7)全身反応時間,8)動的下肢アライメントについて高校生スポーツ選手を対象としてデータ採取を行いました.平成17年度男子106名,女子100名,平成18年度男子118名,女子77名,合計男子224名,女子177各につき調査項目のデータを採取しました.男女間による統計学的比較では,全身関節弛緩性,Q角,大腿四頭筋・ハムストリング等尺性筋力,動的膝関節アライメントで有意差を認め,膝前十字靱帯断裂の危険因子として男女間の発生率の相違に関連している可能性が示唆されました.特に動的下肢アライメントの分析では,女子で有意にknee-inとなることが明らかとなり,危険因子となりうる可能性が示唆されました.その後の追跡調査によって,平成19年4月の時点で男子1名,女子5名に前十字靭帯損傷の受傷が確認されました,しかしながら現時点では対象数が少なく,受傷者に特徴的な所見は得るには至っていません,更なる調査対象の拡大,追跡調査の延長が必要と考えられます.また,独自に予防トレーニングプログラムを作成し,膝関節キネマティクスに対する効果を三次元動作解析法を用いて検討しました.大学生バスケットボール選手を対象とした6週間のトレーニングでは,女子選手でジャンプ着地動作における膝外反の減少が認められ,予防につながる可能性が示唆されました.
著者
岡村 良久 原田 征行 工藤 正育 津田 英一 小野 睦
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.102-106, 2003 (Released:2008-06-30)
参考文献数
10

腰椎椎間板ヘルニアの保存的治療法には,薬物療法,理学療法,各種ブロック療法などがあるが,その効果が明らかに証明されているものは少ないものの,長期自然経過は良好とされている.しかし,スポーツ選手,特に若年者の場合には時間的制約もあり,速やかに腰下肢痛を改善させて競技復帰をめざすことが大切である.1997 ∼ 2002年までの5年間に治療した男性43名,女性12名,計55名のスポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニアの治療結果から保存的治療成績について検討した.仙骨裂孔ブロック,神経根ブロック,ストレッチを中心とした3週間の運動療法で29例,52.7%に運動時痛の改善を認めた.さらに,体幹の筋力訓練を継続して平均15.6カ月の経過観察では45例,81.8%がスポーツ復帰,継続可能であった.3週間で症状が全く改善しないもの,6週間でも運動時痛がとれない症例には治療法を再検討して,最終的には4例に手術を施行した.