著者
津田 英一 藤 哲 石橋 恭之 岡村 良久 小松 尚 佐藤 英樹
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は膝前十字靭帯損傷受傷の危険因子を解明し,それを元に予防に有効なトレーニングプログラムを作成し,その効果を評価することを目的としています.本年度の目標は,本プロジェクトの最も基礎となる危険因子の解明のために,フィールドワークを行いスポーツ選手の身体的特徴,運動能力などのデータを採取することでした.昨年度に行った予備調査によって決定した調査項目1)全身関節弛緩性,2)膝関節前方安定性,3)Q角,4)関節位置覚,5)大腿四頭筋・ハムストリング等尺性筋力,6)バランス機能,7)全身反応時間,8)動的下肢アライメントについて高校生スポーツ選手を対象としてデータ採取を行いました.平成17年度男子106名,女子100名,平成18年度男子118名,女子77名,合計男子224名,女子177各につき調査項目のデータを採取しました.男女間による統計学的比較では,全身関節弛緩性,Q角,大腿四頭筋・ハムストリング等尺性筋力,動的膝関節アライメントで有意差を認め,膝前十字靱帯断裂の危険因子として男女間の発生率の相違に関連している可能性が示唆されました.特に動的下肢アライメントの分析では,女子で有意にknee-inとなることが明らかとなり,危険因子となりうる可能性が示唆されました.その後の追跡調査によって,平成19年4月の時点で男子1名,女子5名に前十字靭帯損傷の受傷が確認されました,しかしながら現時点では対象数が少なく,受傷者に特徴的な所見は得るには至っていません,更なる調査対象の拡大,追跡調査の延長が必要と考えられます.また,独自に予防トレーニングプログラムを作成し,膝関節キネマティクスに対する効果を三次元動作解析法を用いて検討しました.大学生バスケットボール選手を対象とした6週間のトレーニングでは,女子選手でジャンプ着地動作における膝外反の減少が認められ,予防につながる可能性が示唆されました.
著者
久米 正志 清水 雄二 南條 元 佐藤 英樹 佐藤 友彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P2269, 2010

【目的】厚岸町は北海道の東南部に位置し、総面積は739平方kmで、主な産業は水産業と酪農を中心とした農業である。厚岸町役場保健介護課健康づくり係では、一般高齢者を対象とした介護予防事業の一環として平成13年度から地域出前講座の転倒予防教室「ころばない講座」を始めた。高齢期における具体的な転倒予防のため、地区の自治会・老人クラブ等の開催要請に応える形で実施している。<BR>本研究では町内の各地域に明確な産業特性がある事から、ころばない講座受講者を居住地域毎に「漁村部」「農村部」「市街部」の3地域に分類し、産業特性の異なる各地域間にどのような違いがあるかを比較検討した。<BR>【方法】対象はころばない講座を受講した65歳以上の厚岸町民1598名(男性279名:平均年齢77.1±4.6歳、女性1319名:平均年齢75.1±5.4歳)である。ころばない講座は、検査・検査の見方・日常でころばないための講話・家庭でできる簡単な転倒予防体操で構成されている。検査項目は全身状態の検査として、血圧・体重・体脂肪・BMI・握力、転倒骨折評価として10m全力歩行・最大一歩幅・下肢長・40cm踏み台昇降である。転倒骨折評価は東京厚生年金病院転倒予防教室で行われている健脚度評価を利用した。<BR>本研究では各検査項目の中から転倒骨折評価に焦点を当て、10m全力歩行・最大一歩率(最大一歩幅/下肢長)・40cm踏み台昇降について、健脚度評価基準の転倒カットオフ値を基に3地域を比較検討した。統計処理には1要因の分散分析を用いて、有意水準を5%とした。<BR>【説明と同意】ころばない講座受講者に検査の目的を説明し、本人並びに厚岸町の健康づくりに活用する事の同意を得た。<BR>【結果】10m全力歩行<BR>男性:農村部5.22±1.18秒>市街部5.32±0.90秒>漁村部5.71±1.16秒<BR>女性:農村部5.95±1.70秒>市街部6.09±1.62秒>漁村部6.32±1.64秒<BR> 転倒カットオフ値は6.41秒であり、男女共にカットオフ値を下回る地域はなかった。男女共に各地域間で有意差が認められた。<BR>最大一歩率 <BR>男性:農村部1.32±0.16>漁村部1.31±0.17>市街部1.29±0.12<BR>女性:市街部1.32±0.19>農村部1.30±0.15>漁村部1.26±0.18<BR> 転倒カットオフ値は1.17であり、カットオフ値を下回る地域はなかった。男性は各地域間に有意差が認められなかったが、女性では有意差が認められた。<BR>40cm踏み台昇降(可能の割合を表示)<BR>男性:漁村部67%>市街部65%>農村部62%<BR>女性:農村部41%>市街部・漁村部34%<BR> 男女共に各地域間で有意差が認められた。 <BR>【考察】10m全力歩行・最大一歩率は、3地域男女共に転倒カットオフ値を上回った。3項目の転倒骨折評価を男女地域別に比較検討すると、最大一歩率の男性以外は各地域間に有意差が認められた。10m全力歩行での特徴は、同地域男女の序列が同じ事である。男女共に農村部が最も高く、市街部、漁村部と続く。共に肉体労働である農村部・漁村部で有意差が現れた事は印象的である。仕事の内容の相違や、酪農業は通年であるのに対し漁業は季節性である事も有意差の一因と考えられる。最大一歩率は男性では有意差が認められなかった。女性は有意差が認められ市街部、農村部、漁村部と続く。特に漁村部女性が低い値であった。40cm踏み台昇降は、漁村部では男性が最も高く女性が最も低い等、同地域男女の序列の相違が現れた。女性は農村部が特に高い割合であった。同地域男女の序列の相違は市街部で小さく漁村部・農村部で大きい事から、漁村部・農村部での男女の仕事内容の違いが影響している可能性が考えられる。漁業では主に男性が漁に出て船の乗り降り等で昇降動作を行うのに対し、女性の仕事は加工が主であるいう役割分担もみられる。<BR>各項目で各地域間に有意差が認められたが、それが現役世代の仕事内容からくるものか、引退後の活動歴が影響しているかを精査するためには今後更なる情報が必要である。本研究を基に、現役引退の度合い(家族経営が多いことから部分的な引退も考慮)・各業種における男女別の仕事量や内容の把握・引退年齢や引退後の運動・活動歴の情報も得ていきたい。そして本研究で明らかになった地域間の差や、同地域男女の序列の相違について、どのような因子が影響を与えているのかを明らかにし、各地域に合った予防的な健康づくりの方法を提案していく。<BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法士が保健・福祉と共働・連携し町民の健康づくりを行っていく事の意義は大きく、本講座を通して町民が高齢期における健康づくりを主体的に行う町になるように働きかけていく事ができる。また、厚岸町独特の産業・地域特性に焦点を当て研究を行う事で、受講者のみではなく町全体、更には産業特性が同様な地域に結果を還元する事ができる。
著者
佐藤 英樹 松井 悠祐
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面科学学術講演会要旨集 第29回表面科学学術講演会
巻号頁・発行日
pp.158, 2009 (Released:2009-10-27)

触媒化学気相成長法を用いたカーボンナノチューブ成長において、触媒の酸化がカーボンナノチューブの成長を促進することが報告されている。本研究では、アルコールを原料とする触媒化学気相成長法においても触媒酸化がCNT成長を促進することを見出した。XPSによる触媒酸化状態とCNT成長の相関関係について調べた結果を報告する。
著者
佐藤 英樹 鈴木 克彦 中路 重之 菅原 和夫 戸塚 学 佐藤 光毅
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.431-440, 1998-07-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
35
被引用文献数
12 14

We investigated the effects of acute endurance exercise and habitual physical activity for health maintenance on human neutrophil function in 12 untrained men. The acute exercise condition was a continuous exercise for 90 minutes at the intensity of 50% and 55% of maximal oxygen uptake (VO2max) on an ergometer. The training program was 3km jogging three times per week for 8 weeks. The capacity of neutrophils to produce reactive oxygen species (ROS) was detected with lucigenin-dependent chemiluminescence (LgCL) and luminol-dependent chemiluminescence (LmCL) on stimulation with opsonized zymosan (OZ) and phorbol myristate acetate (PMA).As for the acute exercise effects, both LgCL and LmCL responses of neutrophils stimulated using PMA consistently increased after exercise at 50% VO2max, whereas those stimulated with OZ remained unchanged. At 55% VO2max, LgCL responses to both stimulants increase maximally 1h after exercise, and then decreased 3h after exercise, whereas LmCL responses to both stimulants increased continuously after exercise at 55% VO2max. These phenomena observed at 55% VO2max compared to 50% VO2max suggests the improved capacity of producing ROS neutrophils after exercise. The number of neutrophils also increased maximally 1h after exercise, due to the mobilization of band neutrophils (shift to the left), suggesting that functional changes was associated with cell mobilization. The increase in the capacity of neutrophils to produce ROS and marked neutrophilia following the acute endurance exercise suggests that a large quantity of ROS may be produced in vivo.As for the training effects, the LgCL and LmCL responses were maintained in the exercise group as compared to the decreased ones in the control group. The difference between the exercise group and the control group was observed only in LgCL response to OZ. Humoral immune factors (IgG, IgA, IgM, C3, C4) and serum opsonic activity were also unaltered. These phenomena suggest that homeostasis might be kept constant in terms of immunity through regular physical activity.
著者
鈴木 克彦 佐藤 英樹 遠藤 哲 長谷川 裕子 望月 充邦 中路 重之 菅原 和夫 戸塚 学 佐藤 光毅
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.451-460, 1996-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
42
被引用文献数
2 1

スポーツ選手を対象として, 最大運動負荷に伴う白血球分画と好中球活性酸素産生能の変動を検討したところ, 以下の知見が得られた.1.運動直後に総白血球数が一過性に2倍程度上昇したが, これはリンパ球, 好中球および単球の数的増加によるものであった.好中球数は運動終了1時間後でも上昇した状態にあったが, 核左方移動は認められず, かつ分葉核好中球数の変動と相関が強かったため, 壁在プール由来の好中球動員であったと考えられる.2.リンパ球のなかでLGL (NK細胞) は運動直後に6倍も上昇しており, 終了1時間後には半減した.このようなリンパ球の数的・構成的変動が各リンパ球の機能を測定する上で誤差要因とならないように注意する必要がある.3.ルミノール依存性化学発光法を用いて単離好中球の活性酸素産生能を検討したところ, 刺激物質として貪食粒子のOZを用いた場合のみならず可溶性のPMAを用いた場合にも運動負荷に伴い有意に上昇し, かつ両者の変動には正相関が認められたことから, 単一機序で発光が増強したものと推察される.ルミノール依存性化学発光の反応機構から, 好中球の刺激に伴う脱顆粒能亢進によってMPOを介して強力な活性酸素種 (HOCl) が効率的に産生されやすくなることが示唆された.短時間の運動であっても極端に強度が高い場合には, 毒性の高い活性酸素種を生成しやすい好中球が血中に増加し, リンパ球の機能抑制や筋の炎症等の組織傷害作用を発現する可能性があり, 今後その体内動態をめぐっては, さらに踏み込んだ検討が必要である.
著者
出口 竜作 青木 瞳 松田 聖 佐藤 英樹
雑誌
宮城教育大学紀要
巻号頁・発行日
vol.43, pp.89-95, 2008

The hydrozoan jellyfish Cladonema pacificum is widely distributed on the coast of Japan. Here we report on light-dark conditions for spawning in medusae of this species. All of the medusae captured at Orinohama (Ishinomaki City, Miyagi Prefecture) and at Matsushima (Higashi-Matsushima City, Miyagi Prefecture) spawnedafter dark in the evening of the capture day and continued to spawn every day by dark stimulation (dark-type medusae). In contrast, most of the medusae captured at Asamushi (Aomori City, Aomori Prefecture) spawned in the next morning, following the switch from dark to light; they spawned every day by light stimulation (lighttypemedusae). Medusae of the next generation that had developed from eggs and sperm from Asamushi lighttype medusae spawned in response to light after dark. On the other hand, zygotes from Orinohama and Matsushima medusae developed into dark-type medusae. In light-type female medusae, a light period of 10 seconds after dark was sufficient to induce normal spawning, whereas a continuous dark period of 3 - 9 hours was required before the light stimulation. In dark-type females, a dark period lasting for 3 - 5 minutes was required for spawning. Interestingly, they also spawned in response to light when the order of light and dark periods was reversed. Our data suggest that there are populations of C. pacificum using different light-dark conditions as the trigger for spawning, and that these characters are caused by genetic factors.
著者
上野 吉雄 佐藤 英樹
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.71-84, 2001-05-31 (Released:2007-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

広島県沿岸部において1988年11月から1990年7月にかけて,のべ406個体(うち,巣内雛に117個体)のエナガに標識してつがい形成および繁殖生態について調査した.1)調査地は森林•宅地•農耕地などが複雑に入りくんだ林縁部で,11月から翌年の2月にかけてみられる冬季群のメンバーは安定しており,それらの行動圏も決まっていた.2)成鳥が繁殖期の前に移動し,群れ間でのつがい形成が普通に起こることが明らかになった.3)冬季群は繁殖期に解消され,繁殖期には群れそのものが存在しないことが明らかになった.4)繁殖終了後,冬季群形成前に多くの個体が消失する一方,調査地外から移入してくる個体がいることが明らかになった.5)冬季群のメンバーは,前年と同じ群れに残っていた成鳥,調査地内で出生した幼鳥からなる標識個体,調査地外から移入してきた幼鳥を含む未標識個体で形成されたが,移入個体が半数近くを占あたので,林縁部のエナガの冬季群が血縁集団である可能性はうすいと考えられる.6)ヒナが孵化した巣では高い割合でヘルパーが現れたが,中でもオス親がヒナの孵化以前に消失した巣にヘルパーが現れる率は非常に高かった.7)履歴の確認できたヘルパーはいずれも繁殖に失敗し配偶者が消失したオスであった.