- 著者
-
浅井 禎吾
大島 吉輝
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.2, pp.112-116, 2014 (Released:2016-04-05)
- 参考文献数
- 19
天然物探索研究,いわゆる“ものとり”の醍醐味は,ヒトの想像力をはるかに超える新規な構造や薬理活性を持つ化合物を手にするところにある.しかし,今では胸躍るような新規物質との出会いはなかなか期待できず,やっとの思いで単離したものが既知化合物であったということは,天然物研究者なら誰もが経験したであろう.最近,次世代シーケンサーの登場によってゲノム科学が目覚ましく進展した.その結果,これまで多種多様な二次代謝物が見いだされた放線菌や糸状菌にあっても,そこにはいまだに多くの生合成遺伝子が利用されないまま埋もれていることが分かってきた.未利用生合成遺伝子は新規天然物の新たな鉱脈かもしれない.ここ数年,ゲノム情報に基づく手法や転写制御を利用する手法に加え,難培養微生物ゲノムを利用するメタゲノム法など,未利用生合成遺伝子を活用して新規物質を取得する新しいスタイルの天然物研究が急速に進んだ.本稿では,我々が近年力を入れている,エピジェネティック制御による未利用生合成遺伝子の活用と,そこで得られた多様な天然物を紹介したい.