著者
今井 直子 熊川 孝三 安達 のどか 浅沼 聡 大橋 博文 坂田 英明 山岨 達也 宇佐美 真一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.352-359, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
18

【目的と方法】  先天性難聴の原因として最も頻度が高いのは GJB2 遺伝子変異であり,一般的に非進行性難聴を呈するとされる。今回我々は GJB2 変異97例について遺伝子型と難聴の進行の有無について検討した。【結果】  遺伝子型は従来アジア人に多いとされている235 delC が最も多く,欧米人に多い35 delG は認められなかった。当初からの重度難聴例を除いた41例のうち,1 年以上の間隔で聴力が 2 回以上測定されている症例は32例であった。明らかな難聴の進行例は 1 例,進行疑い例は 3 例であったが,遺伝子型の特定の傾向は認められなかった。【結論】  GJB2 変異においては難聴の進行は稀であり,進行性難聴を呈する特定の遺伝子型は指摘できなかった。しかし乳幼児では特に難聴の程度が言語発達に大きく影響を与えるため,GJB2 遺伝子変異例であっても稀に難聴が進行するということをふまえて注意深く難聴の経過を追う必要がある。
著者
大石 勉 山口 明 荒井 孝 田中 理砂 安達 のどか 浅沼 聡 小熊 栄二 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.274-281, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV)は小児期感音難聴(SNHL)の最も一般的な非遺伝的原因であると共に神経発達遅滞の重要な原因である。 症候性 cCMV の33%,無症候性感染症の10–15%が SNHL を呈し,さらにそのうちの10–20%は遅発性難聴として発症する。出生時一見して無症候性に見えても SNHL を合併していたり,また後に神経発達遅滞が明らかになるいわゆる無症候性 cCMV 感染症は多い。 近年,cCMV における難聴治療にガンシクロビルやバルガンシクロビルを使用し,その有効性が明らかにされてきている。 cCMV を早期に正確に診断して治療を開始するには,全新生児の尿や唾液を対象として PCR 法などによる迅速かつ簡便なスクリーニングをおこない(universal screening),ABR などで難聴の有無を検査することが最も有効と考えられる。さらに,難聴を呈さない cCMV 児を定期的にフォローすることにより,遅発性難聴を洩れなく診断することが可能となる。このスクリーニング体制を確立することにより遅発性難聴を含む cCMV 難聴の可及的に速やかな診断と治療が可能となる。早急な体制整備が期待される。