著者
細井 千晴 坂田 英明 安達 のどか
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.56-61, 2008 (Released:2012-09-24)
参考文献数
12

耳鼻咽喉科疾患は中耳炎や鼻出血など,小児に多い救急疾患の特徴があり,その対応には専門的な知識が必要である.今回我々は,専門的な知識を要する耳鼻咽喉科に関連した電話による問い合わせについて,その内容や対応などの現状を調査した.2006年1月から3月において,耳鼻咽喉科疾患に関連した診療時間外の電話による問い合わせは,81件で全体の8.5%であった.内容は,「異物」「外傷」「鼻出血」に関するものが上位を占めていた.救急外来看護師による院内電話対応マニュアルに沿った対応の結果,約67.1%が救急受診を回避することができた.症候や疾患の特徴をよく理解した上で,電話相談により緊急度を判断し,さらに適切な指導を行うことは,(1)保護者の不安の軽減・対処能力への支援,(2)夜間の時間外診療の負担軽減に効果が期待できる,など小児救急医療の抱える問題の解決の一部として,大変意義深いと考えられる.
著者
今井 直子 熊川 孝三 安達 のどか 浅沼 聡 大橋 博文 坂田 英明 山岨 達也 宇佐美 真一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.352-359, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
18

【目的と方法】  先天性難聴の原因として最も頻度が高いのは GJB2 遺伝子変異であり,一般的に非進行性難聴を呈するとされる。今回我々は GJB2 変異97例について遺伝子型と難聴の進行の有無について検討した。【結果】  遺伝子型は従来アジア人に多いとされている235 delC が最も多く,欧米人に多い35 delG は認められなかった。当初からの重度難聴例を除いた41例のうち,1 年以上の間隔で聴力が 2 回以上測定されている症例は32例であった。明らかな難聴の進行例は 1 例,進行疑い例は 3 例であったが,遺伝子型の特定の傾向は認められなかった。【結論】  GJB2 変異においては難聴の進行は稀であり,進行性難聴を呈する特定の遺伝子型は指摘できなかった。しかし乳幼児では特に難聴の程度が言語発達に大きく影響を与えるため,GJB2 遺伝子変異例であっても稀に難聴が進行するということをふまえて注意深く難聴の経過を追う必要がある。
著者
富澤 晃文 力武 正浩 伏木 宏彰 坂田 英明 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.43-52, 2017-02-28 (Released:2017-06-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要旨: 聴覚障害乳児における VRA の条件付け形成月齢を明らかにすることを目的とした検討を行った。中等度~重度難聴の20名を対象に, インサートイヤホン装着下の気導 VRA (および骨導 VRA) による純音聴力測定を実施した結果, 月齢 6 ~ 11ヵ月の期間に19名 (95%) の条件付けが形成された。VRA の測定可能率は, 0 歳 6 ヵ月時点で 1名 (5%), 7 ヵ月で 5名 (25%), 8 ヵ月で 11名 (55%), 9 ヵ月で14名 (70%), 10 ヵ月で 18名 (90%) であった。気導 VRA の反応閾値 (2000Hz) と ABR の V 波閾値の間には強い正の相関 (r = 0.87) がみられ, 両者は近似した。VRA の平均反応閾値と条件付け形成月齢の間にはやや強い正の相関 (r = 0.58) がみられ, 聴力の程度が増すほど条件付け形成月齢が遅れる傾向が示された。一方, 運動発達 (定頸, 座位, 独歩) の遅れは条件付け形成月齢に有意な遅れをもたらさなかった。早期の聴覚補償とハビリテーションの上では, 0歳後半の月齢期に気導/骨導 VRA を重点的に実施した上で他覚的検査とのクロスチェックを行うことが重要と考えられる。
著者
富澤 晃文 遠藤 まゆみ 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.263-269, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
16
被引用文献数
1

聴覚障害乳幼児を対象に VRA (visual reinforcement audiometry)による骨導聴力測定を行った。6 症例(0~2 歳)の気導/骨導 VRA による気骨導差の推定について,他検査との整合性の観点から検討した。トリーチャー・コリンズ症候群,中耳炎併発例の 2 例においては,VRA により気骨導差が示された。70 dB 以下の感音難聴であった 2 例では,VRA による気骨導差はみられなかった。高度・重度感音難聴であった 2 例の骨導 VRA はスケールアウトを示した。骨導聴力が一定レベルまで残存していれば,気導/骨導 VRA の組み合わせにより気骨導差の有無とその程度の推定が可能であった。得られた検査結果は誘発反応・画像などの他覚的検査の所見と概ね整合しており,行動観察的手法によって良側の骨導オージオグラムを得る意義が示された。本手法と他検査とのクロスチェックは,乳幼児における伝音/感音障害の鑑別に有用と思われた。
著者
大石 勉 山口 明 荒井 孝 田中 理砂 安達 のどか 浅沼 聡 小熊 栄二 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.274-281, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV)は小児期感音難聴(SNHL)の最も一般的な非遺伝的原因であると共に神経発達遅滞の重要な原因である。 症候性 cCMV の33%,無症候性感染症の10–15%が SNHL を呈し,さらにそのうちの10–20%は遅発性難聴として発症する。出生時一見して無症候性に見えても SNHL を合併していたり,また後に神経発達遅滞が明らかになるいわゆる無症候性 cCMV 感染症は多い。 近年,cCMV における難聴治療にガンシクロビルやバルガンシクロビルを使用し,その有効性が明らかにされてきている。 cCMV を早期に正確に診断して治療を開始するには,全新生児の尿や唾液を対象として PCR 法などによる迅速かつ簡便なスクリーニングをおこない(universal screening),ABR などで難聴の有無を検査することが最も有効と考えられる。さらに,難聴を呈さない cCMV 児を定期的にフォローすることにより,遅発性難聴を洩れなく診断することが可能となる。このスクリーニング体制を確立することにより遅発性難聴を含む cCMV 難聴の可及的に速やかな診断と治療が可能となる。早急な体制整備が期待される。
著者
石塚 洋一 坂田 英明 上房 啓祐 設楽 仁一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement1, pp.45-50, 1994-08-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
13

いびきの治療に点鼻用噴霧剤であるEN028を用い, その治療効果を検討した。いびきを主訴に来院した23-68歳までの男性25名, 女性11名, 合計36名を対象に, 本剤を就寝前に各鼻孔に2-4回ずつ噴霧させた。総合効果判定では, 著効1名, 有効12名, やや有効9名, 無効14名で, 有効以上の有効率は36.1%, やや有効以上の有効率は61.1%であった。50歳以上18名の有効以上は9名 (50%) で, 高齢者に有効症例が多くみられた。副作用は1例もなく, EN028はいびき治療に有用と思われた。