著者
大石 勉 山口 明 荒井 孝 田中 理砂 安達 のどか 浅沼 聡 小熊 栄二 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.274-281, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV)は小児期感音難聴(SNHL)の最も一般的な非遺伝的原因であると共に神経発達遅滞の重要な原因である。 症候性 cCMV の33%,無症候性感染症の10–15%が SNHL を呈し,さらにそのうちの10–20%は遅発性難聴として発症する。出生時一見して無症候性に見えても SNHL を合併していたり,また後に神経発達遅滞が明らかになるいわゆる無症候性 cCMV 感染症は多い。 近年,cCMV における難聴治療にガンシクロビルやバルガンシクロビルを使用し,その有効性が明らかにされてきている。 cCMV を早期に正確に診断して治療を開始するには,全新生児の尿や唾液を対象として PCR 法などによる迅速かつ簡便なスクリーニングをおこない(universal screening),ABR などで難聴の有無を検査することが最も有効と考えられる。さらに,難聴を呈さない cCMV 児を定期的にフォローすることにより,遅発性難聴を洩れなく診断することが可能となる。このスクリーニング体制を確立することにより遅発性難聴を含む cCMV 難聴の可及的に速やかな診断と治療が可能となる。早急な体制整備が期待される。
著者
冠木 智之 大宜見 力 田中 理砂 池松 かおり 城 宏輔 鍵本 聖一 大石 勉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.92-98, 2005 (Released:2005-04-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

生直後より頻回に感染を繰り返し,家族歴からも原発性免疫不全症を疑ったが,生後6ヵ月時に大腸内視鏡検査所見よりクローン病と診断した1男児例を経験した.本症例はステロイドを含む各種薬物治療に抵抗したため,抗TNF-α療法としてインフリキシマブ,サリドマイドによる治療を行った.インフリキシマブは皮疹出現のため,1クール3回の投与を終了できず,症状の若干の改善(PCDAI 47.5→30)を得ただけであった.一方サリドマイドは各症状(下痢,腹痛,発熱,瘻孔)の著しい改善(PCDAI 45→15)を認めた.副作用(浮腫,皮疹,末梢神経障害)のためサリドマイド投与は4.5ヵ月で中止したが,瘻孔閉鎖効果は長期持続した.出現した副作用は投与中止により漸次消退した.サリドマイドはその投与量については再考の必要があるが,通常の治療に抵抗性のクローン病患児に対して試みて良い治療法と考えられた.乳児クローン病は極めてまれであり,その診断治療に苦慮することが多い.その病態解明,治療の進歩には今後更に詳細なデータの蓄積が必要である.クローン病を含めた炎症性腸疾患は今後小児科領域でも増加することが予想され,嘔吐,下痢症といった消化器症状に加え,肛門周囲に裂創,膿瘍,瘻孔を認めた場合は,乳児であっても炎症性腸疾患を疑う必要があると考えられた.