著者
児玉 (渡邉) 茉奈美 浅野 昭祐 菅 文美 成戸 洋介
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.306-320, 2022 (Released:2022-07-01)
参考文献数
24

本研究の目的は, 新型コロナウィルスの流行により在宅勤務の増加や家庭外からの育児サポートが受けられにくい特殊な状況下で, 初めての育児における夫の育児参加の阻害/促進要因を明らかにすることであった. 研究1では, 夫婦を対象にした半構造化面接を実施して, このような状況下での夫の育児参加を取り巻く変数間の関係を整理して仮説モデルを生成した. 研究2では夫のみを対象に質問紙調査を実施して, 仮説モデルの検証を行った. 本研究の結果, このような状況下において, 第一子に対する父親の育児参加の阻害/促進要因としては, 在宅勤務か否か, 子どもの笑顔や成長を肯定的に評価する機会があるか否か, そして妻からの夫の育児に関する肯定的な評価の伝達があるか否かという3点が挙げられた. 本研究の知見の適用場面は, 新型コロナウィルスの流行下に必ずしも限定されるものではなく, 在宅勤務が継続される場合や, 家庭外からの育児サポートが受けられにくい家庭において, どのように育児支援を行うかといった介入案のヒントになると考えられる.
著者
浅野 昭祐 兵藤 宗吉
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.95-104, 2012

Hamilton & Geraci (2006) は,画像が持つ意味的な特徴よりむしろ,画像における概念的示差性のある特徴を処理することによって,画像優位性効果 (PSE) が生起すると主張している(概念的示差性仮説). しかしながら,画像処理に利用される特徴に対して符号化課題が影響するのか否か,そして概念的示差仮説が顕在記憶におけるPSEにも適用可能なのか否かは明らかにされていなかった.そこで,筆者らは符号化課題,刺激形態,ならびに検索手がかり,検索意図を操作することによって,これらの問題に関して検討を行った.実験参加者は,画像または単語を,命名(実験1)もしくはカテゴリ分類(実験2)することにより学習した.そして,テスト課題として,意味的または概念的示差性のある検索手がかりが与えられる潜在記憶課題および顕在記憶課題に従事した.実験1の潜在記憶課題においては,概念的示差性のある検索手がかりが与えられた場合にのみPSEが生起したが,顕在記憶課題においては検索手がかりにかかわらずPSEが生起した.一方,実験2においては,いずれの条件においてもPSEは生起しなかった.本研究の結果,画像における概念的示差性情報が利用されるか否かは,符号化課題の性質とテスト時の検索意図に依存することが示唆された.