- 著者
-
浜崎 学
- 出版者
- 日本保険学会
- 雑誌
- 保険学雑誌 (ISSN:03872939)
- 巻号頁・発行日
- vol.2012, no.619, pp.619_241-619_259, 2012-12-31 (Released:2014-05-08)
- 参考文献数
- 15
東京電力福島第一原子力発電所(沸騰水型軽水炉,BWR)の事故は,東日本大震災による巨大津波という共通原因によって,最終的な熱の逃がし場(ヒートシンク)と安全設備を支える電源系が広範に機能を喪失したこと(クリフエッジ効果)が直接の原因であった。加圧水型軽水炉(PWR)プラントは,蒸気発生器(SG)によって主蒸気系を原子炉冷却系から隔離しているため,同様の津波に襲われて電源を喪失したとしても,放射性物質を含まない蒸気を大気放出することで最終ヒートシンクを確保でき,自然循環によって原子炉を冷却できるという優れた耐性を有する。更に,今回の事故の教訓を反映し,電気設備等の水密化,非常用発電機の高台設置等の津波対策を進めており,格納容器による深層防護の強化も計画している。今後も,世界最高水準に安全性を高めたPWR技術によって低炭素エネルギー源の確保に貢献していく所存である。