著者
浜川 仁
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.2, pp.69-81, 2006-01

This paper examines Eiki Matayoshi's Pig's Revenge (Buta no Mukui) —the 1996 winner of the prestigious Akutagawa Prize— in an attempt to uncover a form of Orientalism by Okinawans against their fellow Okinawans. It argues that during the process of modernization, local communities throughout Okinawa experienced a series of transformations within which intellectuals have come to harbor ambivalent opinions about their home islands and cultures. Such ambivalent feelings characterize the attitude of the protagonist, Shokichi, towards the three food-devouring female characters who represent the backwardness and the provincial elements of Okinawa. This paper demonstrates how Matayoshi's Pig's Revenge presents Okinawa as a political and cultural "other" in relation to Japan. Readers sense in the person of Shokichi the same kind of sorrow and loneliness as held by the Okinawan intellectual elite — victims of discursive self-exclusion, who, born and raised in Okinawa, were nevertheless forced to adopt foreign perspectives through which to "discover," ironically, what had always been theirs to begin with.小論では、又吉栄喜著「豚の報い」(以下「報い」)に、沖縄人による沖縄人に対するオリエンタリズムを探り出していきたい。沖縄は、琉球処分以来日本本土を通して、または外国から直接先進国の文物を受け入れてきた。その中で、沖縄人の思想や価値観も大きく変わってきた。財界や政界のエリートたち、特に文化思想的影響に直にさらされた知識人たちは、郷土に対し極めて両義的な感情を抱くようになっていった。この羨望と軽蔑の入り混じった感情が、「報い」の中では、食事を貪る女性たちを観察する主人公正吉の精神態度を特徴づけている。又吉の「報い」に見出されるのは、このように沖縄の後進性を象徴する、他者としての女性であり、正吉によって代表される有識者たちの孤独と疎外感が、この作品からは滲み出ている。彼ら知的リーダーたちは、近代の沖縄に生まれ、そこで生きながら、認識の上ではいつのまにか外にはみ出してしまい、そこから沖縄を「発見」せざるをえなかったと論ずる。
著者
山里 勝己 石原 昌英 豊見山 和行 宮里 厚子 山城 新 浜川 仁 ベイヴェール パトリック ジェンキンズ A・P スチュアート フランク
出版者
名桜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、近代初頭の琉球・沖縄をめぐる欧米のトラベルライティングを広範に検証した。合衆国探検遠征隊の研究を通し、ペリー提督の対琉球・日本外交を、太平洋諸島における米国の国家戦略上に位置づける可能性が拓かれた。また、琉球と日本においてカトリック教の再布教を担ったフランス人宣教師たちの足跡に、史料紹介や翻訳等を通し光を当てた。さらに、クリフォードとマクスウェルの残した二つの新資料の紹介を行い、沖縄近代史の画期・一八一六年の英艦隊来琉の実像を浮き彫りにした。薩摩の支配による琉球海域秩序の変化の考察は、西洋との言語的接触が不可能となった状況についての今後の研究に、貴重な材料を提供している。