著者
川島 夏希 久永 貴之 浜野 淳 前田 一石 今井 堅吾 坂下 明大 松本 禎久 上村 恵一 小田切 拓也 小川 朝生 吉内 一浩 岩瀬 哲
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.237-243, 2019 (Released:2019-09-26)
参考文献数
24

【目的】せん妄を呈した進行がん患者における苦悩の実態の検討.【方法】国内14施設の緩和ケア病棟に入院中または国内10施設の一般病棟に入院し精神腫瘍科が介入中の進行がん患者のうち,せん妄と診断され抗精神病薬の定期投与を受ける患者を前向きに連続サンプリングした.苦悩の有無を緩和ケア専門医が判断し,患者背景,DRS-R-98で評価したせん妄の重症度を比較した.【結果】対象患者818名のうち99名(12.1%)に苦悩を認めた.年齢,39歳以下,認知症の有無に有意差を認めた.治療前のDRS-R-98(15.3±8.1点 vs 17.3±7.8点,p<0.02)は苦悩を伴う群で有意に低く,情動の変容は有意に高かった.【考察】せん妄を呈した進行がん患者で苦悩を伴うものでは年齢が低く,認知症の併存が少なく,せん妄の重症度は低く,情動の変容が強いことが示された.
著者
平山 英幸 里見 絵理子 木澤 義之 宮崎 万友子 田上 恵太 関根 龍一 鈴木 梢 余谷 暢之 菅野 康二 安保 博文 坂下 明大 佐藤 一樹 中川 左理 中澤 葉宇子 浜野 淳 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.171-180, 2022 (Released:2022-12-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】患者報告型アウトカムを用いて緩和ケアの質をアウトカムの視点から評価するための患者登録システムの実施可能性を検証すること.【方法】電子的データ収集による患者登録システムを2021年に8施設で運用した.1カ月間に緩和ケアチームが新規介入依頼を受けた全入院患者を前向きに登録した.症状評価はIPOSまたはESASを介入時,3日後,介入から1週間ごとに取得した.主要評価項目は患者と医療者による症状評価尺度への回答率である.【結果】318人が登録.患者の回答率は介入時59.1%,介入後37.0%で医療者の回答率は介入時98.4%,介入後70.3%だった.緩和ケアチームからは「患者の回答はサポートが必要で,タブレットよりも紙がよい」,「調査日や全体の管理が負担」などの意見が出た.【考察】実施可能性があると考えられる一方で,システムや運用方法の改善点が明らかになり,実装に向けた貴重な情報が得られた.