著者
三輪 聖 森田 達也 松本 禎久 上原 優子 加藤 雅志 小杉 寿文 曽根 美雪 中村 直樹 水嶋 章郎 宮下 光令 山口 拓洋 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.281-287, 2021 (Released:2021-10-26)
参考文献数
18

【目的】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言を収集する.【方法】2020年2月から4月に緩和医療専門医・認定医762名を対象とした全国質問紙調査を実施した.緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味を自由記述で質問し,症状別に分類した.【結果】有効回答492名(64.8%).233名(47.4%)が方言として116語を挙げ,苦痛を表現する方言は101語であった.「倦怠感・特定できない苦痛・全体的な調子の悪さ」(N=62),「疼痛」(N=13),「呼吸器・循環器症状」,「精神症状」(各N=8),「消化器症状」,「神経・筋・皮膚症状」(各N=5)であった.【結語】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味が明らかになった.苦痛の適切な評価のために,苦痛を表す様々な方言があることを理解することが必要である.
著者
石川 彩夏 荒川 さやか 石木 寛人 天野 晃滋 鈴木 由華 池長 奈美 山本 駿 柏原 大朗 吉田 哲彦 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.159-163, 2023 (Released:2023-06-08)
参考文献数
8

【緒言】緩和的放射線療法などによりがん疼痛が緩和されオピオイドを中止する際,身体依存による興奮,不眠,下痢などの離脱症候群を起こす場合があるため,適切に対処する必要がある.【症例】72歳男性.食道がん術後.経過中,仙骨,右腸骨転移による腰痛,右下肢痛が出現.オキシコドン(以下,OXC)を開始したが緩和せず,メサドン(以下,MDN)に切り替え,並行して緩和的放射線療法を施行した.疼痛は徐々に緩和し,MDNを漸減,OXCに切り替え後20 mg/日で患者の強い希望にて終了した.内服中止後から静座不能,不安,下痢が出現し離脱症候群と診断.OXC速放製剤,フェンタニル貼付剤,スボレキサントを併用し離脱症状の治療を行った.【考察】オピオイド中止時は10%/週より遅い減量が望ましく,最小用量に減量した後の中止が推奨される.離脱症状にはオピオイド速放製剤を用い,症状コントロールと並行して漸減を試みるとよい.
著者
天野 晃滋 木内 大祐 石木 寛人 松岡 弘道 里見 絵理子 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.147-152, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
27

人は生きるために食べるが,食事は社会的存在である人にとってそれ以上の意味をもつ.進行がん患者は,腫瘍・治療の副作用・がん悪液質のため「食べないといけないが食べられない」「食べるようにしているが痩せてしまう」というような食欲不振・体重減少を主因とする食に関することで苦悩し,生活をともにする家族も患者とは異なる苦悩を有することが近年の研究でわかってきた.これらを踏まえ,われわれは患者と家族の食に関する苦悩のような心理社会的苦痛における緩和ケア・サポーティブケア・栄養ケアを統合した多職種連携ケアの重要性を指摘し,患者と家族の食に関する苦悩の評価尺度を作成している.現時点では,患者と家族の食に関する苦悩のケアは世界的に確立されておらず,これら苦悩の多職種による統合ケアを開発すること,さらにこの統合ケアの効果を検証すること,また将来的には,本邦のがんセンター・がん診療拠点病院での実践・普及を目指す.
著者
平山 英幸 里見 絵理子 木澤 義之 宮崎 万友子 田上 恵太 関根 龍一 鈴木 梢 余谷 暢之 菅野 康二 安保 博文 坂下 明大 佐藤 一樹 中川 左理 中澤 葉宇子 浜野 淳 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.171-180, 2022 (Released:2022-12-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】患者報告型アウトカムを用いて緩和ケアの質をアウトカムの視点から評価するための患者登録システムの実施可能性を検証すること.【方法】電子的データ収集による患者登録システムを2021年に8施設で運用した.1カ月間に緩和ケアチームが新規介入依頼を受けた全入院患者を前向きに登録した.症状評価はIPOSまたはESASを介入時,3日後,介入から1週間ごとに取得した.主要評価項目は患者と医療者による症状評価尺度への回答率である.【結果】318人が登録.患者の回答率は介入時59.1%,介入後37.0%で医療者の回答率は介入時98.4%,介入後70.3%だった.緩和ケアチームからは「患者の回答はサポートが必要で,タブレットよりも紙がよい」,「調査日や全体の管理が負担」などの意見が出た.【考察】実施可能性があると考えられる一方で,システムや運用方法の改善点が明らかになり,実装に向けた貴重な情報が得られた.