著者
浦野 雅世 三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.422-429, 2011-12-31 (Released:2013-01-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1

複数の事象の空間的な関係を表す文の理解能力を調べる目的で「関係の理解テスト」を作成し, この検査が統語処理能力の低下では説明できない水準の障害を検出しうるか, それは左頭頂葉病変に特異的な障害であるかを検証した。対象は左頭頂葉に病変のある軽度流暢型失語症例 5 名, 左頭頂葉に病変のない失語統制群 5 名 (軽度流暢型 3 名・軽度非流暢型 2 名), 左頭頂葉病変群と年齢をマッチさせた健常統制群 10 名である。統制群 2 群は「関係の理解テスト」で良好な成績を示したが, 左頭頂葉病変群では全例で低下を示した。しかし, 失語症構文検査, トークンテスト, 助詞理解検査では左頭頂葉病変群の成績は良好で, 「関係の理解テスト」の成績とこうした従来の文理解検査の成績との相関は明らかでなかった。これらの結果から「関係の理解テスト」は文の統語的側面とは性質の異なる, 空間的な関係を表す文の理解障害を検出するのに鋭敏であることが示された。
著者
浦野 雅世
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.288-293, 2019-09-30 (Released:2020-10-01)
参考文献数
21

呼称障害や喚語困難は失語症の中核症状であるが, その発現機序は一様ではない。  Lambon Ralph ら (2002) は呼称障害を「音韻」と「意味」の 2 つの表象の損傷で説明している。彼らは呼称成績を基準変数, 意味連合検査と非語音読の成績を説明変数とした重回帰分析の結果, 説明率 (R2) は 0.55 であったとしている。このような先行研究の結果からは, 失語症におけるセラピーの組み立てには音韻機能と意味機能がどのようなバランスで障害されているのか, どちらが症例の中核症状であるかを吟味し, それぞれに合ったプログラムを立案していくことの必要性が示唆される。実際の臨床では, 「音韻」と「意味」を同時に提示する課題 (例 : 線画・文字・音声刺激) が多くを占めるため, 両者を厳密に区別することは困難であるが, 少なくともセラピーのターゲットを絞り込むことが重要であろう。音韻 / 意味それぞれに焦点をあてたセラピーを実施した自験例 2 例を提示した。
著者
浦野 雅世 石榑 なつみ 谷 永穂子 中尾 真理 三村 將
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.188-197, 2017-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
29

右半球病変で錯文法を呈した矯正右手利きの症例を報告した.呼称障害はごく軽微でありながら,自由発話/説明発話の別を問わず助詞の誤用が著明であり,脱落は皆無であった.逸脱語順や統語構造の単純化は明らかでなかった.理解面では語義理解は良好に保持されながらも,平易な会話の理解からしばしば困難を呈した.側性化の異なる失文法症例では統語的側面と形態論的側面の障害が共起しているのに対し,本例は形態論的側面のみに障害を呈しており,側性化の異なる失文法とは発現機序が異なると考えられた.本例の錯文法の発現は異常側性化に起因するものとであると推察された.
著者
浦野 雅世 石榑 なつみ 谷 永穂子 中尾 真理 三村 將
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
pp.17006, (Released:2017-08-25)
参考文献数
29

右半球病変で錯文法を呈した矯正右手利きの症例を報告した.呼称障害はごく軽微でありながら,自由発話/説明発話の別を問わず助詞の誤用が著明であり,脱落は皆無であった.逸脱語順や統語構造の単純化は明らかでなかった.理解面では語義理解は良好に保持されながらも,平易な会話の理解からしばしば困難を呈した.側性化の異なる失文法症例では統語的側面と形態論的側面の障害が共起しているのに対し,本例は形態論的側面のみに障害を呈しており,側性化の異なる失文法とは発現機序が異なると考えられた.本例の錯文法の発現は異常側性化に起因するものとであると推察された.