著者
淀川 顕司
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.103-108, 2022-06-14 (Released:2022-06-24)
参考文献数
6

心電図でのT波は,心室の興奮消退(再分極)を反映しており,活動電位持続時間に較差が生じる状態や心室興奮伝播の変動の影響を受け,陰性・2相性・平坦化等,様々に変化する.心電図T波の変化は,一次性変化と二次性変化に分類される.一次性変化は,心筋虚血や心筋梗塞,心肥大などの病態に伴って心室の各部で活動電位持続時間に較差が生じる状態で認められるT波変化である.一方,二次性変化は,心室期外収縮や脚ブロック,WPW症候群などでみられる心室興奮伝播の変化に基づくST-T波形変化である.臨床的に重要なのは,高カリウムや心筋梗塞急性期におけるT波増高,肺塞栓における陰性T波,虚血性心疾患における2相性・陰性T波,肥大型心筋症・脳血管障害やたこつぼ型心筋症に伴う巨大陰性T波である.疾患・病態ごとのT波の特徴をおさえておくことが重要である.
著者
淀川 顕司 森田 典成 小林 義典 小原 俊彦 村田 広茂 高山 英男 清野 精彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.1, pp.S1_19, 2012 (Released:2013-08-23)

[背景・目的] Brugada症候群と不整脈源性右室心筋症(ARVD)はともに加算平均心電図における心室遅延電位(LP)が高率に検出されるが,そのLPの形態に着目すると,ARVDでは高周波成分で形成されるのに対し,Brugada症候群では比較的低周波成分で形成されることが多い.そこで,われわれは,QRS波の周波数解析を行うことにより両者の周波数特性を検討した.[対象と方法] 特発性右室流出路起源心室頻拍(RVOT-VT)20例,Brugada症候群10例,ARVD 10例.全例で心電図Z誘導QRS波をガボール関数を用いてウェーブレット変換し,各周波数帯でのピークのパワー値,および総パワー値を比較.[結果] Brugada症候群では80Hzを中心に,ARVDでは150Hzを中心にQRS内部に高周波成分が発達していた.高周波帯の中で最大パワーを有する周波数はBrugada症候群に比し,ARVDで有意に高かった(81.7± 19.9Hz vs 145.4± 27.9 Hz,p[結論] 心電図QRS波の周波数解析において,周波数特性は,Brugada症候群とARVDで明らかに異なる.