著者
深柄 和彦
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.909-913, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
9
被引用文献数
2

NST活動の広がりとともにわが国でも脂肪乳剤の利用が増えつつある。しかし、脂肪粒子の代謝スピードの問題、脂肪乳剤存在下での病原体増殖の問題、ω6系脂肪酸を主成分とする大豆油由来であるがゆえの炎症反応増悪の危険性、がある。したがって、1) 適正な投与スピード・量を守る、2) 輸液ラインの24時間以内の交換、3) 高度な炎症反応が生じている急性期での投与を控える、ことに注意をはらう必要がある。
著者
深柄 和彦
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.277-281, 2007 (Released:2007-10-26)
参考文献数
5

免疫栄養(immunonutrition)は、新しい患者管理法であり、栄養によって生体反応を調節し合併症発生を抑え予後改善をめざす治療法である。その強化成分である個々のimmunonutrientはそれぞれ生体反応の調節機序が異なっており、その組み合わせ・量によって免疫増強・抗炎症作用など異なる作用の栄養製剤となる。病態に応じた栄養製剤の選択が必要となる。
著者
海堀 昌樹 宮田 剛 谷口 英喜 鍋谷 圭宏 深柄 和彦 鷲澤 尚宏 小坂 久 福島 亮治
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.221-227, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
9

本学会では2012年からESSENSE(ESsential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction)プロジェクトを立ち上げた.プロジェクトでの方策が現実に患者満足度を向上させて身体的回復を促進するか否かを検証するために,2014年に前向き多施設共同研究を行った.【方法】食道切除,胃全摘あるいは胃切除,膵頭十二指腸切除,肝切除,大腸切除を対象術式とした.対照期間として各施設従来通りの周術期管理を行う6カ月とした.その後ESSENSE介入による周術期管理を行う6カ月を介入期間とし,介入前後を術式ごとに比較する前向きコホート試験とした.【結果】術後3,7病日での質問法QoR40を用いた患者満足度の定量的評価では,5対象術式において介入群でのQoR40改善効果は認めなかった.各術式における生化学検査所見,Clavien‐Dindo分類による術後合併症発生率,在院日数,医療費においても両群間に差を認めなかった.【考察】ESSENSE介入群において良好な周術期管理結果が導けなかった要因として,「周術期不安軽減と回復意欲の励起に対する取り組み」としての患者自らのESSENSE日記記載ではQoR40患者満足度に対しては不十分であった.非介入群におけるQoR40結果自体が低値ではなく,さらなる上乗せ効果のエンドポイント設定自体が問題であったのではないかと推察された.また身体活動性の早期自立,栄養摂取の早期自立に対しても今回の介入策では不十分であったと考えられた.
著者
葛谷 雅文 深柄 和彦 Agathe RAYNAUD-SIMON Cornel Christian SIEBER Jürgen M. BAUER Stéphane M. SCHNEIDER
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.935-954, 2011 (Released:2011-06-15)
参考文献数
112
被引用文献数
3

高齢者では高頻度で栄養障害がおこりやすく、それが原因で様々な健康障害やサルコペニアを誘発するのみならず、在院日数の延長、生命予後にも関わっている。低栄養の要因に関しては高齢者特有の多くの原因があり、その要因を含めた定期的な栄養評価が必要である。栄養療法に関しても十分な臨床的なエビデンスが必ずしも構築されているわけではないが、早期に人工的栄養療法を含めた栄養学的介入が高齢者の健康障害の予防につながる可能性がある。
著者
村越 智 深柄 和彦 安原 洋
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.339-346, 2017 (Released:2018-05-22)
参考文献数
50

微量元素やビタミンは,代謝経路の要所において補助因子や補酵素として作用し,代謝全体を調節することで生命維持に寄与している.重症患者においては,その病態から酸化ストレスの増加が明らかになっているが,一連の炎症反応の引き金となる酸化ストレスを制御し得る抗酸化物質として微量元素やビタミンは注目をあつめている.このPharmaconutrition をいかに重症患者治療へと結びつけるかが基礎・臨床研究の両方面から模索されており,重症患者への投与は“是”とする意見が多い.しかし少なからず“非”とする意見もあり,今後の研究の展開が待たれる.