17 0 0 0 OA 経口補水療法

著者
谷口 英喜
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.151-164, 2015-12-01 (Released:2015-12-17)
参考文献数
42

経口補水療法(ORT: oral rehydration therapy)とは,脱水症の改善および治療を目的として水・電解質を経口的に補給する治療方法である.2003 年に公表された米国疾病管理予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインでは,小児の軽度~中等度の脱水状態に対して ORS の使用が推奨されている.わが国では,2000 年代より臨床現場での活用が活発になってきた.高齢者においては,飲水および喫食量の不足によって起きた慢性的な脱水症に対して活用されている.また,暑熱環境下の労働などの産業衛生領域,マラソンや相撲などの暑熱環境下におけるスポーツ領域,手術前後の輸液療法の代用として周術期領域,熱中症の治療として救急領域でも活用されている.特に,2015 年には日本救急医学会から,熱中症診療ガイドライン 2015 が公表され,その中で熱中症患者に生じた脱水症に対して ORT を実施することが推奨された.今後,熱中症対策として ORT を早期に実施することで,熱中症の進行および熱中症による臓器障害の発生を抑止することが期待される.
著者
谷口 英喜
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.245-253, 2022-05-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
18

超高齢化社会に突入したわが国では,治療技術の向上により,高齢患者への手術適応が以前にも増して拡大した.高齢患者では,呼吸循環器系の合併症に加え,認知機能の低下やサルコペニアおよびフレイルなどが,周術期に問題視される.ERAS protocolでは,高齢者に対する術前環境適正化策の一つとして,プレハビリテーションが推奨されるようになった.プレハビリテーションでは,運動療法,心理的サポートおよび栄養サポートの3つの介入をする.標準的なケアと比較してプレハビリテーションにより術後疼痛,在院日数および身体機能が改善することが示されている.一方,わが国では,術前準備期間の不足や保険制度上の支援がないことから普及がいまだ進んでいない.
著者
谷口 英喜
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.1126-1130, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
14

在宅栄養管理においては、高齢者の体液についての特徴を理解して適切な体液状態の評価が望まれる。特に、高齢者では脱水症を呈しやすいために、早期に脱水症が診断され迅速かつ適切な対応が求められる。体液状態をみるにあたり、採血や器具を用いた診断は在宅管理には適していないためにフィジカルアセスメントによる診断が望まれる。アセスメント項目としては、触診による四肢末梢の冷感、口腔内の乾燥、爪毛細血管の再充血時間の遅延、皮膚の張り (ツルゴール) の低下、腋窩の乾燥などが高齢者における脱水症の所見として知られている。在宅栄養管理の担当者は、これらの所見を定期的に観察し在宅栄養管理の質の向上を目指して欲しい。
著者
牛込 恵子 谷口 英喜
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.99-107, 2018 (Released:2018-08-23)
参考文献数
13

当院では,2016 年8 月1 日より専任医師およびパラメディックより運営される周術期支援センター(Tobu Hospital Perioperative Support Center:TOPS)を開設した.本稿では,Skill Mix 型のチーム医療として術前の栄養管理に焦点をあてた,「手術準備外来」における管理栄養士の役割を報告する.当外来では,最もよい全身状態で手術が迎えられるように,入院2 週間前に外来にて患者の全身アセスメントおよび情報収集,手術に関してのリスク判定,必要に応じて直接介入を多職種(医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,歯科衛生士)により実施していることが特徴である.いわゆる外来型のNST 活動も当外来に含まれる.また,当院の周術期管理には,術後回復能力強化プログラム(ERAS®)の概念を取り入れており,術後早期回復を目標にEarly Drinking, Eating, Mobilizing(DREAM)を達成できるようにさまざまな工夫を術前より行っている.
著者
海堀 昌樹 宮田 剛 谷口 英喜 鍋谷 圭宏 深柄 和彦 鷲澤 尚宏 小坂 久 福島 亮治
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.221-227, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
9

本学会では2012年からESSENSE(ESsential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction)プロジェクトを立ち上げた.プロジェクトでの方策が現実に患者満足度を向上させて身体的回復を促進するか否かを検証するために,2014年に前向き多施設共同研究を行った.【方法】食道切除,胃全摘あるいは胃切除,膵頭十二指腸切除,肝切除,大腸切除を対象術式とした.対照期間として各施設従来通りの周術期管理を行う6カ月とした.その後ESSENSE介入による周術期管理を行う6カ月を介入期間とし,介入前後を術式ごとに比較する前向きコホート試験とした.【結果】術後3,7病日での質問法QoR40を用いた患者満足度の定量的評価では,5対象術式において介入群でのQoR40改善効果は認めなかった.各術式における生化学検査所見,Clavien‐Dindo分類による術後合併症発生率,在院日数,医療費においても両群間に差を認めなかった.【考察】ESSENSE介入群において良好な周術期管理結果が導けなかった要因として,「周術期不安軽減と回復意欲の励起に対する取り組み」としての患者自らのESSENSE日記記載ではQoR40患者満足度に対しては不十分であった.非介入群におけるQoR40結果自体が低値ではなく,さらなる上乗せ効果のエンドポイント設定自体が問題であったのではないかと推察された.また身体活動性の早期自立,栄養摂取の早期自立に対しても今回の介入策では不十分であったと考えられた.
著者
谷口 英喜
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.228-233, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
17

わが国の麻酔科領域において,enhanced recovery after surgery(以下ERAS)プロトコルが知られはじめたのは,術前経口補水療法(preoperative oral rehydration therapy:POORT)が導入された2009年にさかのぼる.その後,麻酔科領域にも広くERASプロトコルの概念が普及していく中で,プロトコル原型を実施する際の課題が明らかになってきた.課題としては,わが国では術前炭水化物負荷の実施が積極的ではないこと,硬膜外鎮痛の実施頻度がいまだに高いこと,術前準備期間が短いこと,麻酔科医が手術室外で十分に業務できないこと,などがあげられる.理想的には,麻酔科医が手術室外で現在よりも業務を実施できる環境となればERASプロトコルの実施における外科医の負担軽減および達成度の向上に貢献できると考える.本稿では,それぞれの課題と対策について述べる.
著者
谷口 英喜 辻 智大 中田 恵津子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.731-737, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
17

【目的】経口補水液の前投与が、経腸栄養剤の胃排出速度に与える影響を検討した。【対象および方法】健常成人ボランティア7名を対象としてクロスオーバー研究を実施した。何も投与しない群 (N群) とミネラルウォーターを投与した群 (MW群) および経口補水液を投与した群 (ORS群) における、胃排出速度を、13C呼気ガス診断を応用した胃排出能検査標準法により評価した。Primary end pointとして個々における前処置ごとに最高血中濃度到達時間 (Tmax) の変化 (⊿ Tmax) を比較した。【結果】N群のTmaxを基準にして⊿ Tmaxを比較した結果、MW群に比べORS群において経腸栄養剤の胃排出速度を促進する効果が大きかった[⊿ Tmax(MW) vs. ⊿ Tmax (ORS) :-5±15.0 min vs. -17.1 ±9.1 min ; P=0.03]。【結論】この結果から、経腸栄養剤投与前に経口補水液を投与することで、摂取された経腸栄養剤の胃排出速度が促進されると考えられた。
著者
谷口 英喜 牛込 恵子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.381-391, 2017-07-25 (Released:2017-08-29)
参考文献数
16
被引用文献数
1

目的:本研究では,自立在宅高齢者におけるかくれ脱水(体液喪失を疑わせる自覚症状が認められないにもかかわらず,血清浸透圧値が292から300 mOsm/kg・H2O)の実態調査を行い,非侵襲的なスクリーニングシートを開発することを目的とした.方法:65歳以上の自立在宅高齢者222名を対象に血清浸透圧値を計測し,かくれ脱水の該当者を抽出した.該当者において,脱水症の危険因子および脱水症を疑う所見に関してロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を根拠に配点を行った.配点の高い項目から構成される自立在宅高齢者用かくれ脱水チェックシートを作成し,該当項目の合計点数の陽性的中率を求めリスク分類を行った.結果:自立在宅高齢者においてかくれ脱水の該当者は,46名(20.7%)であった.先行研究のかくれ脱水チェックシートを改良し,①トイレが近くなるため寝る前は水分補給を控える傾向がある(3点),②利尿薬を内服している(8点),③随時血糖値が126 mg/dl以上である(9点),④80歳以上である(3点),⑤男性である(4点),⑥体重60 kg以上である(3点),の6項目から構成される,自立在宅高齢者用かくれ脱水チェックシートを考案した.このシートにおいて,13点以上(合計30点)であればかくれ脱水である危険性が高いと考えられた(陽性的中率72%,陰性的中率85.6%;P<0.0001).結論:自立在宅高齢者においては,脱水症の前段階であるかくれ脱水が20.7%の割合で存在し,非侵襲的なチェックシートにより抽出が可能である.
著者
谷口 英喜 秋山 正子 五味 郁子 木村 麻美子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.359-366, 2015-10-25 (Released:2015-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

目的:介護老人福祉施設の通所者におけるかくれ脱水(脱水の前段階)の実態調査を行い,非侵襲的なスクリーニングシートを開発することを目的とした.方法:介護老人福祉施設の通所者70名を対象に血清浸透圧値を計測し,かくれ脱水(体液喪失を疑わせる自覚症状が認められないにもかかわらず,血清浸透圧値が292から300 mOsm/kg・H2O)の該当者を抽出した.該当者において,脱水症の危険因子および脱水症を疑う所見に関してロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を根拠に配点を行った.配点の高い項目から構成される高齢者用かくれ脱水発見シートを作成し,該当項目に応じた合計点毎の感度および特異度を求め,抽出に最適なカットオフ値を探索した.結果:かくれ脱水の該当者は,15名(21.4%)であった.先行研究のかくれ脱水発見シートを改良し,①女性である(4点),②BMI≧25 kg/m2(5点),③利尿薬を内服している(6点),④緩下薬を内服している(2点),⑤皮膚の乾燥や,カサつきを認める(2点),⑥冷たい飲み物や食べ物を好む(2点),の6項目から構成される高齢者用かくれ脱水発見シートを考案した.このシートにおいて,かくれ脱水である危険性が高いと考えられるカットオフ値は,9点(合計21点)に設定した(感度0.73,特異度0.82;P<0.001).結論:高齢者においては,脱水症の前段階であるかくれ(潜在的な)脱水が一定の割合で存在し,非侵襲的なスクリーニングシートにより抽出が可能である.
著者
谷口 英喜 岡本 凉子 上島 順子 阿部 咲子 岡本 葉子 牛込 恵子 石井 良昌
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.733-740, 2014 (Released:2014-05-15)
参考文献数
15

【目的】非脱水症の高齢者における、長期間の経口補水療法(ORT)の安全性および有効性を検証する。【対象および方法】対象者は、高齢者介護施設に入所している非脱水症の高齢者とした。研究デザインは、複数施設におけるランダム化割り付け比較試験とした。ORTによる介入を実施しないコントロール群(CN群、41名)と、介入を実施する介入群(OS群、41名)とした。OS群では、30日間継続的に経口補水液を1日当たり500~1,000mL摂取させた。【結果】OS群における安全性は、(1)合併症、(2) vital signおよび喫食率への影響、(3)血液学的所見の異常、が認められなかったことより証明された。有効性に関しては、ナトリウム部分排泄率の上昇、BUN/Cr比および血漿浸透圧の低下が認められたことより体液増加効果ありと判断された。しかし、CN群において脱水の発生が認められなかったことから、脱水予防の証明には至らなかった。【結論】非脱水症の高齢者における、長期間の ORTの安全性が証明され脱水予防の効果に関する有効性が示唆された。