著者
赤松 茂 佐々木 努 深町 映夫 末永 康仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.1363-1373, 1993-07-25
被引用文献数
48

本論文では,濃淡画像のマッチングによる画面顔画像の識別に関して,顔の造作を基準点として切り出された照合パターンを識別に有効な低次元の特徴ベクトルとして表現する方法について考察する.代表的な従来手法として,濃淡パターンのモザイク化と顔パターン集合のKL展開による次元圧縮の二つを取り上げ,各々の問題点を考察した.その結果を踏まえて,照合パターン抽出に不可避な位置ずれ変動に対してよりロバストな識別用特徴を得るために,幾何学的な不変変換の一つであるフーリエスペクトルへの変換の後にKL展開によって次元圧縮を行う方法を提案した.この3種類の特徴の識別における耐性を比較するために,種々の幾何学的変動を与えた照合パターンのテストサンプルに対して最小距離法による識別を行った.また多様な照明条件下で得られる多数の顔画像パターンを,3次元計測した頭部モデルからCGを用いて生成し,それらのパターンから得られる各特徴データのクラス間分離度によって特徴の識別能力を比較評価した.以上の結果から,新たに提案した特徴は従来法と比べて,顔の姿勢や照明条件の変動に対して安定した識別能力をもつことが確かめられた.
著者
尾田 政臣 赤松 茂 深町 映夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.288-297, 1996-02-25
被引用文献数
16

好みの顔といった感性的に表現された顔を明確な視覚的イメージとして想起するのは難しい. しかし, 課題として与えられた顔イメージを描いたり言語的に報告することは難しくとも, 提示された顔画像が自分のイメージに合っているか判定することは容易である. 視覚的にイメージ化しにくい対象であっても, イメージは確かに存在する. 筆者らは画像データベースの中から, 好みの顔のイメージのように検索当初にはあいまいな検索対象を効率良く検索させる方法について検討してきた. 画像データとして線画の顔画像を用い, 好みの顔などを検索させる実験を行い, その方法論的正しさを明らかにした. そこで本論文では顔画像データとして顔写真を用いた場合の方法について検討する. 写真をデータとする場合の最大の難しさは, 何を検索の手掛りにするかである. 主観的な印象をラベルとして各画像に付与する方法や物理的な形状の特徴を用いる方法が考えられる. しかし, いずれの方法においてもデータベースの構築は手作業を伴う大変な作業となる. そこで, 特徴表現に対する手作業の必要ない方法であり, 顔の認識の手法としてその有効性が確かめられているKL展開を採用することとした. 本論文では, KL展開が好みの顔といったあいまいな顔イメージに基づく顔画像検索に対しても有効に働くことを明らかにする.