著者
岩淵 紀介 清水(肖) 金忠
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.112-121, 2010 (Released:2012-04-01)
参考文献数
36

近年、先進諸国を中心にアレルギー疾患が急激に増加し、その原因の1つとして微生物との接触機会の減少を指摘する「衛生仮説」が提唱されている。「衛生仮説」と関連して、アレルギー疾患と腸内細菌との関連が示され、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスによる抗アレルギー効果が研究されている。ヒト由来ビフィズス菌Bifidobacterium longum BB536については、これまで複数の臨床試験においてスギ花粉症に対する発症予防および症状抑制作用が認められている。ビフィズス菌による免疫調節作用としては、Th1/Th2バランスの改善や制御性T細胞の誘導などの機序が報告されている。またBB536は、花粉症臨床試験の中で花粉飛散に伴う腸内細菌叢の変動を抑制するなど、整腸作用を介した間接的な免疫調節作用も示唆されている。本稿では、BB536摂取による花粉症改善効果を中心にビフィズス菌による抗アレルギー作用及びその作用機序について紹介する。
著者
榎本 雅夫 清水(肖) 金忠 島津 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1394-1399, 2006-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
3

【背景】最近,乳酸菌の抗アレルギー作用への興味が高まりつつある.しかし,日々のヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取によるアレルギーの発症の抑制についての報告はほとんどない.【方法】和歌山県下の中学1年生を対象に,ヨーグルトや乳酸菌飲料,納豆の摂食習慣と血清総IgE値,特異的IgE抗体量,各種アレルギー疾患の有無について調査を実施し,得られた134人の回答について解析を行った.【結果】ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取歴のあるものでは,血清総IgE値が有意に低値で,アレルギー疾患の有病率も有意に少なかった.しかし,納豆の摂取の有無では,これらの関係は認められなかった.【結論】アレルギー疾患の発症に乳酸菌などの腸内細菌が深く関与していることを裏付ける疫学調査の興味ある結果であった.今後,症例を増やして検討する価値のある治験であろうと考えている.
著者
近藤 しずき 清水(肖) 金忠
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.281-286, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3

プロバイオティクスによるコレステロール低下などの血中脂質改善作用に関しては, in vitro実験,動物実験およびヒト試験にて多数の報告があった.その作用機序としてコレステロールの菌体への吸着や脱抱合型胆汁酸との共沈による吸収抑制,ビフィズス菌や乳酸菌の持つ胆汁酸脱抱合酵素の作用による胆汁酸排泄促進および,腸管において産生される短鎖脂肪酸によるコレステロール合成抑制などが考えられている.ヒト試験において,特に高い胆汁酸脱抱合酵素活性を持つビフィズス菌や乳酸菌による改善作用が多く報告されている一方,一部の乳酸菌について効果は認められない報告も散見され,プロバイオティクスによる血中脂質改善効果について更なる検証が必要である.また,近年,腸内細菌叢と肥満や脂質代謝の関係についても急速に研究が進んでおり,今後の発展が注目される.