- 著者
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渋谷 耕司
- 出版者
- 一般社団法人 口腔衛生学会
- 雑誌
- 口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.5, pp.778-792, 2001-10-30 (Released:2017-12-08)
- 参考文献数
- 68
- 被引用文献数
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5
特別な歯科疾患のない健康な成人男性の呼気あるいは口腔内気体(口気)中の臭気成分の分析ならびにその主成分の発生要因について検討した。1.口臭の強さが異なる健常な成人男性の呼気から15種類の低級脂肪酸,揮発性窒素化合物あるいは揮発性硫黄化合物(VSC)が検出された。そのうち,不快臭がある呼気および口気にはVSCのうちメチルメルカプタン(CH3SH)が常に認知閾値に対して高濃度で存在し,かつ官能評価値(不快度)の高低とよく対応したことから,これが不快臭の主要な成分であることが確認された。2.呼気,口気および唾液気相に含まれるVSCの組成を比較検討した結果,不快臭すなわちCH3SHの主な発生部位が口腔であること,また,唾液,歯垢,舌苔の培養実験の結果から,これらの発生には主に嫌気性微生物が関与していること,その基質としてL-メチオニンが重要であることが示された。さらに,口腔各部位の清掃によるCH3SHの産生能低下の比較結果から,舌背が主要な発生部位であることが知られた。3.CH3SH産生への関与を明らかにするため,口腔微生物17菌属42菌種71菌株を調べたところ,歯列病関連細菌であるPorphyromonas,FusobacteriumおよびSpirochetesに高い産生能が認められた。また,主要な舌苔常在菌の1つであるVeillonellaの一部も高い産生能を示し,健常人における口臭の発生に密接にかかわっていることが示唆された。