著者
渕野 由夏
出版者
福岡県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度は、訪問看護師の職業性ストレスが睡眠障害に及ぼす影響(因果関係)を明らかにすることを目的とした縦断的研究を行った。平成17年度に実施した質間紙調査に協力の得られた333名のうち、質問紙に氏名・所属等の記入がなかった者を除く319名を調査対象とした。調査方法は平成17年度と同様の方法の郵送法による質問紙調査(NIOSH職業性ストレス調査票と独自に作成した睡眠調査票からなる調査票)を実施した。その結果、216名から回答が得られ(回収率67.7%)、今回はこのうち男性を除く211名を解析対象者とした(有効回答率97.7%)。はじめに、NIOSH職業性ストレス調査票の各尺度の得点を平成17年度実施調査(以下、前回調査)結果および平成18年度実施調査(以下、今回調査)結果から個人毎に尺度別に算出し、前回調査に比べ今回調査の方がストレスが減少した者を「ストレス改善群」、ストレスが増加した者を「ストレス悪化群」とした。次に、睡眠状況に関する項目の合計点(以下、睡眠状況得点)と睡眠感に関する項目の合計点(以下、睡眠感得点)についても、前回調査および今回調査の調査結果から個人毎にそれぞれの得点を算出し、睡眠状況、睡眠感各々ついて、前回調査に比べ今回調査の方が改善した者を「改善群」、変化がなかった者を「変化なし群」、悪化した者を「悪化群」とした。そして、ストレス改善群、ストレス悪化群と睡眠状況。睡眠感の改善群、変化なし群、悪化群の関連についてχ^2検定により検討を行った。その結果、睡眠状況については、職務満足感はストレス悪化群の方がストレス改善群に比べ、睡眠状況悪化群の割合が有意に高く(p<0.05)、また、役割葛藤、量的労働負荷についても同様の傾向がみられた(p<0.1)。また、睡眠感については、役割葛藤、職務満足感のストレス悪化群の方がストレス改善群に比べ、睡眠感悪化群の割合が有意に高く(p<0.05)、また、量的労働負荷、上司からの社会的支援についても同様の傾向がみられた(p<0.1)。したがって、役割葛藤、職務満足感、量的労働負荷、上司からの社会的支援が悪化すると、睡眠状況・睡眠感の悪化に関連したり、関連のある傾向があることから、これらの職業性ストレスは訪問看護師の睡眠障害へ影響を及ぼす要因(因果関係のある要因)であることが明らかになった。