著者
荒川 哲男 藤原 靖弘 富永 和作 渡辺 俊雄 谷川 徹也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3655-3663, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
48

消化管傷害を来たす薬物として,もっとも頻度の高いものは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアスピリンである.これらの薬剤は,整形外科領域やリウマチ内科で消炎鎮痛を目的とし,あるいは循環器や脳神経領域,ならびに代謝内分泌領域で血管イベントの一次,二次予防の目的で頻用されている.しかし,これらの薬剤による有害事象でもっとも多いのが,消化管イベント(出血,穿孔など)であり,消化器内科医とのクロストークがますます重要になってきた.胃酸分泌領域である上部消化管が病変発生の首座を占めるが,最近,小腸が可視化できるようになり,NSAIDs/アスピリンによる小腸粘膜傷害・出血がトピックスになっている.予防・治療に関しては,消化管全体を視野に入れた新しい考え方が必要になってきた.COX-2選択的阻害薬など,NSAIDs側の工夫も重要である.消化管傷害をきたす他の薬剤としては,抗生物質などがあるが,それらについても少し触れたい.
著者
大谷 恒史 渡辺 俊雄 藤原 靖弘
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.77-84, 2017-06-30 (Released:2017-09-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は骨関節炎や関節リウマチに対して汎用される薬剤であるが,有害事象として胃・十二指腸潰瘍などの上部消化管傷害の頻度が高い.さらに近年カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の出現によって,NSAIDsが胃・十二指腸だけでなく小腸傷害を高頻度に惹起することがわかってきた.NSAID起因性小腸傷害の予防策として選択的COX-2阻害剤の使用が挙げられるが,短期の使用では抑制効果を有するものの長期使用では抑制効果が消失する.また疾患修飾性抗リウマチ薬などの抗リウマチ薬はNSAIDsと併用することによって,小腸傷害の発生頻度が高くなると考えられている.一方で抗TNF-α抗体療法を施行されている関節リウマチ患者においては,NSAID起因性傷害が軽微であることが判明している.さらに臨床上重要な点として,胃酸非依存的傷害であるNSAID起因性小腸傷害に対してプロトンポンプ阻害剤は無効であるばかりか,傷害を増悪させる可能性が示唆されている.NSAID起因性小腸傷害に対して有効性が期待される薬剤としては粘膜防御因子製剤やプロスタグランジン製剤があるが,さらに我々は抗TNF-α抗体療法,プロバイオティクスやコルヒチンが新たな治療薬の候補となりうると考えている.今後これらの新たな知見を踏まえたNSAID起因性消化管傷害に対する治療戦略の確立が必要である.
著者
藤原 靖弘 村木 基子 木幡 幸恵 杉森 聖司 山上 博一 谷川 徹也 渡辺 憲治 渡辺 俊雄 富永 和作 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.3523-3528, 2011 (Released:2012-01-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は31歳,女性,6年前より嚥下困難・食物のつまり感を自覚し,他院で内視鏡など検査するも異常を指摘されなかった.症状が徐々に増悪するため紹介受診.上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に一致して著明な狭窄を認めたが,明らかな腫瘍や粘膜不整を認めず,超音波内視鏡では主に粘膜層の肥厚を認めた.食道生検にて食道粘膜内に著明な好酸球浸潤とmicroabscess形成を認め,好酸球性食道炎と診断した.フルチカゾン嚥下療法により症状および内視鏡像・組織学的改善を認めた.好酸球性食道炎は本邦では稀な疾患であるが,典型的な症状と特徴的な内視鏡像より食道生検を施行することが早期診断に重要である.
著者
富永 和作 越智 正博 谷川 徹也 渡辺 俊雄 藤原 靖弘 押谷 伸英 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.783-790, 2009-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

目的:脳腸相関に鑑みたfunctional dyspepsia(FD)の病態生理として,日常ストレスが関与し,その認知は自律神経系や各種メディエーターを介して,運動機能をはじめとする消化管機能に影響を及ぼし,消化器症状を誘発することが推察される.そこで,ストレス負荷が与える消化管運動機能への影響と,自律神経機能の関与,その治療効果について検討した.方法:8週齢Wistar系雄性ラットに5日間の水浸ストレス負荷を与え,体重,相対臓器重量および血中カテコラミンなど,胃排出能を測定した.FD患者にストレス負荷度を問診し,24時間心拍変動解析を行った.高周波成分(HF:0.15〜0.40Hz)は副交感神経機能を,低周波成分(LF:0.04〜0.15Hz)との比LF/HFは交感神経機能の指標とした.(1)24時間全体,(2)覚醒時,睡眠時の比較,(3)食事負荷,(4)自律神経刺激前後での変動および回復度,(5)ディスペプシア症状程度と相関性について検討した.成績:1)ストレス負荷は,体重・相対胸腺重量を有意に低下させたが,副腎重量は有意に増加した.2)血漿ACTH,コルチコステロン,アドレナリン,ノルアドレナリンは増加し,胃排出時間は短期負荷では遅延し,長期負荷では充進した.3)ストレス負荷24時間では,総グレリンおよびデスアシルグレリンの増加を認め,その後の低下と同時期にアシルグレリンの増加を認めた.4)FD群では,24時間平均での副交感神経機能の有意な低下を認め,相対的交感神経系の亢進状態を示した.5)食後30〜60分の副交感神経系ならびに食後90分以降の交感神経系の変動が,FD群では約半数に認められなかった.6)自律神経作動薬での自律神経系アンバランスと消化器症状の改善効果が認められた.結論:FD症例ではストレス負荷による自律神経系の変動と胃機能不全が存在し,外的刺激に対する修正機能の脆弱性が示唆された.自律神経調節薬の有効性が示された.
著者
藤原 靖弘 平本 慶子 朴 成華 中原 憲一 木幡 幸恵 谷川 徹也 渡辺 憲治 富永 和作 渡辺 俊雄 荒川 哲男
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.965-970, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本邦ではGERD患者の半数以上が何らかの睡眠障害を有しており,特にNERD患者に多い.夜間の逆流は,胸やけ症状・覚醒の有無やおこる時間帯により入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害をきたす.一方,睡眠障害が食道知覚神経過敏を介してGERD症状を悪化させることから,GERDと睡眠障害は相互関連がある.GERDと閉塞性睡眠時無呼吸は共通のリスク因子を有することがその関連に影響を与えている.睡眠障害をともなうGERD患者では睡眠障害をともなわないGERD患者に比較して,GERD症状が強く,健康関連QOLや労働生産性が低下している.
著者
市田 弘 渡辺 俊雄
出版者
Japan Concrete Institute
雑誌
コンクリートジャーナル (ISSN:00233544)
巻号頁・発行日
vol.11, no.10, pp.17-26, 1973

原子炉の遮蔽コンクリートとして数多い実績を持つ重量コンクリートを強力な波力の作用する灯標建設に応用した施工報告である。コンクリート構造物としての強度 (σ<SUB>28</SUB>, =180kg/cm<SUP>2</SUP>) 指定が比重指定に加わったことが, この工事を価値あるものとした。設計から施工への実験的研究で工法の成功を裏づけ, また実施工の面でも台風が急襲したことなど工法選択の安全性, 確実性を認識させた。<BR>コンクリート量は陸上打設160m<SUP>3</SUP>, 海上打設110m<SUP>3</SUP>であり, コンクリートはすべてプレパクト工法によって施工した。<BR>ブイ標識から灯標に変わり航路確保, 光源保守が非常に安全かつ容易になった。