著者
堀田 潔 渡部 公彦 森 あろか 高塚 正樹 林 健博 松山 宗樹 仲川 浩一郎 薮嶒 恒夫 藤原 靖弘 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.2202-2207, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
22

症例は68歳,男性.数週間前より腹部膨満感を自覚しており,外来での上部内視鏡検査で胃石を認めた.当院入院後,コーラによる溶解療法に引き続いて,内視鏡的にスネアで砕石,除去し得た.胃石の治療としてはコーラ溶解療法,内視鏡的治療が知られているが,それぞれの単独治療でのデメリットを補う意味でも,併用療法が単独治療より有用かつ安全であると思われる.
著者
藤原 靖弘 沢田 明也 橋本 篤 高嶋 信吾 田中 史生
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.12, pp.1081-1086, 2020-12-10 (Released:2020-12-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1

症例は52歳女性.半年前より頻回のげっぷがあり,上部消化管内視鏡検査で異常を認めず,薬物抵抗性のため紹介.腹部単純X線では胃や小腸内に著明なガス貯留を認めず.診察中も頻回のげっぷが出現したが,会話中は認めなかった.高解像度食道内圧検査および食道インピーダンスpHモニタリングの解析より,excessive supragastric belchingと診断した.認知行動療法により,げっぷの回数は減少した.
著者
荒川 哲男 藤原 靖弘 富永 和作 渡辺 俊雄 谷川 徹也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3655-3663, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
48

消化管傷害を来たす薬物として,もっとも頻度の高いものは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアスピリンである.これらの薬剤は,整形外科領域やリウマチ内科で消炎鎮痛を目的とし,あるいは循環器や脳神経領域,ならびに代謝内分泌領域で血管イベントの一次,二次予防の目的で頻用されている.しかし,これらの薬剤による有害事象でもっとも多いのが,消化管イベント(出血,穿孔など)であり,消化器内科医とのクロストークがますます重要になってきた.胃酸分泌領域である上部消化管が病変発生の首座を占めるが,最近,小腸が可視化できるようになり,NSAIDs/アスピリンによる小腸粘膜傷害・出血がトピックスになっている.予防・治療に関しては,消化管全体を視野に入れた新しい考え方が必要になってきた.COX-2選択的阻害薬など,NSAIDs側の工夫も重要である.消化管傷害をきたす他の薬剤としては,抗生物質などがあるが,それらについても少し触れたい.
著者
大谷 恒史 渡辺 俊雄 藤原 靖弘
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.77-84, 2017-06-30 (Released:2017-09-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は骨関節炎や関節リウマチに対して汎用される薬剤であるが,有害事象として胃・十二指腸潰瘍などの上部消化管傷害の頻度が高い.さらに近年カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の出現によって,NSAIDsが胃・十二指腸だけでなく小腸傷害を高頻度に惹起することがわかってきた.NSAID起因性小腸傷害の予防策として選択的COX-2阻害剤の使用が挙げられるが,短期の使用では抑制効果を有するものの長期使用では抑制効果が消失する.また疾患修飾性抗リウマチ薬などの抗リウマチ薬はNSAIDsと併用することによって,小腸傷害の発生頻度が高くなると考えられている.一方で抗TNF-α抗体療法を施行されている関節リウマチ患者においては,NSAID起因性傷害が軽微であることが判明している.さらに臨床上重要な点として,胃酸非依存的傷害であるNSAID起因性小腸傷害に対してプロトンポンプ阻害剤は無効であるばかりか,傷害を増悪させる可能性が示唆されている.NSAID起因性小腸傷害に対して有効性が期待される薬剤としては粘膜防御因子製剤やプロスタグランジン製剤があるが,さらに我々は抗TNF-α抗体療法,プロバイオティクスやコルヒチンが新たな治療薬の候補となりうると考えている.今後これらの新たな知見を踏まえたNSAID起因性消化管傷害に対する治療戦略の確立が必要である.
著者
藤原 靖弘 村木 基子 木幡 幸恵 杉森 聖司 山上 博一 谷川 徹也 渡辺 憲治 渡辺 俊雄 富永 和作 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.3523-3528, 2011 (Released:2012-01-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は31歳,女性,6年前より嚥下困難・食物のつまり感を自覚し,他院で内視鏡など検査するも異常を指摘されなかった.症状が徐々に増悪するため紹介受診.上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に一致して著明な狭窄を認めたが,明らかな腫瘍や粘膜不整を認めず,超音波内視鏡では主に粘膜層の肥厚を認めた.食道生検にて食道粘膜内に著明な好酸球浸潤とmicroabscess形成を認め,好酸球性食道炎と診断した.フルチカゾン嚥下療法により症状および内視鏡像・組織学的改善を認めた.好酸球性食道炎は本邦では稀な疾患であるが,典型的な症状と特徴的な内視鏡像より食道生検を施行することが早期診断に重要である.
著者
富永 和作 越智 正博 谷川 徹也 渡辺 俊雄 藤原 靖弘 押谷 伸英 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.783-790, 2009-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

目的:脳腸相関に鑑みたfunctional dyspepsia(FD)の病態生理として,日常ストレスが関与し,その認知は自律神経系や各種メディエーターを介して,運動機能をはじめとする消化管機能に影響を及ぼし,消化器症状を誘発することが推察される.そこで,ストレス負荷が与える消化管運動機能への影響と,自律神経機能の関与,その治療効果について検討した.方法:8週齢Wistar系雄性ラットに5日間の水浸ストレス負荷を与え,体重,相対臓器重量および血中カテコラミンなど,胃排出能を測定した.FD患者にストレス負荷度を問診し,24時間心拍変動解析を行った.高周波成分(HF:0.15〜0.40Hz)は副交感神経機能を,低周波成分(LF:0.04〜0.15Hz)との比LF/HFは交感神経機能の指標とした.(1)24時間全体,(2)覚醒時,睡眠時の比較,(3)食事負荷,(4)自律神経刺激前後での変動および回復度,(5)ディスペプシア症状程度と相関性について検討した.成績:1)ストレス負荷は,体重・相対胸腺重量を有意に低下させたが,副腎重量は有意に増加した.2)血漿ACTH,コルチコステロン,アドレナリン,ノルアドレナリンは増加し,胃排出時間は短期負荷では遅延し,長期負荷では充進した.3)ストレス負荷24時間では,総グレリンおよびデスアシルグレリンの増加を認め,その後の低下と同時期にアシルグレリンの増加を認めた.4)FD群では,24時間平均での副交感神経機能の有意な低下を認め,相対的交感神経系の亢進状態を示した.5)食後30〜60分の副交感神経系ならびに食後90分以降の交感神経系の変動が,FD群では約半数に認められなかった.6)自律神経作動薬での自律神経系アンバランスと消化器症状の改善効果が認められた.結論:FD症例ではストレス負荷による自律神経系の変動と胃機能不全が存在し,外的刺激に対する修正機能の脆弱性が示唆された.自律神経調節薬の有効性が示された.
著者
藤原 靖弘 平本 慶子 朴 成華 中原 憲一 木幡 幸恵 谷川 徹也 渡辺 憲治 富永 和作 渡辺 俊雄 荒川 哲男
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.965-970, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本邦ではGERD患者の半数以上が何らかの睡眠障害を有しており,特にNERD患者に多い.夜間の逆流は,胸やけ症状・覚醒の有無やおこる時間帯により入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害をきたす.一方,睡眠障害が食道知覚神経過敏を介してGERD症状を悪化させることから,GERDと睡眠障害は相互関連がある.GERDと閉塞性睡眠時無呼吸は共通のリスク因子を有することがその関連に影響を与えている.睡眠障害をともなうGERD患者では睡眠障害をともなわないGERD患者に比較して,GERD症状が強く,健康関連QOLや労働生産性が低下している.
著者
渡邉 俊雄 藤原 靖弘 富永 和作 谷川 徹也 樋口 和秀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Prostaglandin(PG)の代謝酵素である15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(15-PGDH)の胃癌の病態生理における役割について検討した。進行胃癌71例中35例において15-PGDH蛋白の発現は低下しており、多変量解析では15-PGDHの発現低下は生命予後の不良と関連していた。15-PGDH陰性群では15-PGDH陽性群に比較してKi67陽性率は有意に高値であった。15-PGDH発現をsiRNA法でノックダウンすると胃癌細胞株であるAGS細胞の増殖能は亢進した。以上の結果から15-PGDHは胃癌における独立した予後規定因子であることが判明した。
著者
眞岡 孝至 秋元 直茂 藤原 靖弘 橋本 圭二
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.45, pp.611-616, 2003-09-01

The ripe fruits of paprika (Capsicum annuum L.) is a good source of carotenoids and is used widely as a vegetable and food colorant. The red carotenoids are mainly capsanthin and capsorbin, possessing 3-hydroxy-6-oxo-κ-end group. In the course of the carotenoids studies of paprika, two new carotenoids 1 and 2 were isolated as minor components. The MeOH extract of ripe fruits of paprika (4kg) was saponified with 5% KOH/MeOH, and unsaponifiable matter was chromotographed on silica gel using an increasing percentage of acetone in hexane. The fraction eluted with acetone-hexane (1:9) was subjected to a series of HPLC on ODS with CHCl_3-acetonitrile (1:9) and on silica gel with acetone-hexane (2:8) to yield 1 (2mg) and 2 (0.5mg). The molecular formula of 1 was determined to be C_<40>H_<56>O_2 by HR FAB MS. The positive ion FAB MS/MS spectrum of the molecular ion (M^+) of 1 is shown in Fig 1a. Characteristic product ions of M-111 and M-139 which attributed to cleavage between C-5' and C-6' and between C-6' and C-7', respectively suggested the presence of 6-oxo-κ-end group in 1. The structure of 1 was determined to be 3-hydroxy-β,κ-caroten-6'-one by ^1H- and ^<13>C-NMR, COSY, TOCSY, NOESY, HSQC and HMBC data and named 3'-deoxycapsanthin. The structure of 2 was determined to be 3,4-didehydro-β,κ-caroten-6'-one by HR FAB MS, FAB MS/MS, UV-Vis and ^1H-NMR data. From the CD spectral data and biosynthetic consideration 3R, 5'R and 5'R chiralities were proposed for 1 and 2, respectively. They are the first example of carotenoids possessing 6-oxo-κ-end group.