著者
カタージェフ ティホミール 渡辺 兼五 東城 清秀 内ヶ崎 万蔵 藍 房和 ホワン バーニィ
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.47-56, 1996

環境を保全しながら農地の生産性を改善する手法として, 樹木を利用するアグロフォレストリ (AGROFORESTRY) が注目されている。これは, 土壌浸食や汚染を受けることが多い農地の利用形態として, 作物だけでなく短期間に樹木を栽培するもので, 経済的な観点から積極的な普及が期待されている。樹木を農地に移植することは重労働であり, 樹木苗の全自動移植機の開発が急務となっている。<br>本研究の目的は, 野菜移植のために開発されたエアプルーニング育苗方法を樹木の育苗に応用し, 生長に及ぼす影響および派生する問題点について検討することである。<br>実験ではセル深さの異なる育苗トレイ (深さ40, 70, 140mm) を用いて, それぞれについてエアプルーニング, 部分エアプルーニング, エアプルーニングなしの条件で育苗を行った。ファイトトロンにおいて夜間と昼間の温度を17℃, 28℃そして湿度を95%, 65%に設定し, ユーカリと赤マツを育苗した。ユーカリは播種後20日で出芽して, 出芽率は85%であったが, 赤マツは播種後24日で出芽して, 出芽率95%であった。出芽に対してはエアプルーニング育苗の影響はセル深さ40mm以外の実験区ではみられなかった。これは40mmより深いセルでは根が底に届く前に発芽が行われたためと考えられた。<br>ユーカリと赤マツの苗はエアプルーニングを施した全実験区で健苗となった。100mmの草丈に達したのはユーカリが4週間目で, 赤マツが24週間目であった。樹木の生長について統計処理を行った結果, 出芽で差が生じた深さ40mmトレイの実験区も, 移植時までに他の実験区とほぼ同様の生長となることが示された。
著者
カタージェフ ティホミール 渡辺 兼五 東城 清秀 内ヶ崎 万蔵 藍 房和 ホゥアング バーニ
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.183-189, 1995

空気整根育苗を目的にした底面開放型トレイを供試して苗ブロックを下方へ吸引移植する場合の抜き取りエネルギについて検討した。ピートモスと土を混合した苗ブロックの充填密度および含水率をそれぞれ2水準設定して試験を行った。第1試験は育苗トレイに培土を充填した直後に植生なしで行い, 第2試験は播種後40日間育苗したキャベツ苗ブロックについて行った。テーパのないトレイセルの抜き取りエネルギはテーパのあるトレイセルより12倍のエネルギを消費した。
著者
東城 清秀 渡辺 兼五
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

昨年度の研究結果から、雪室における切花の短期貯蔵は低コストで、生理学的にも安定した貯蔵環境を実現できることがわかった。しかし、一方で貯蔵後の花の開花について、特に赤色の発色に劣化が見られたことから、今年度は低温貯蔵中の切花の品質変化と発色について重点的に実験を行った。雪室の環境条件を低温、高湿度であると単純化した上で、実験室内の低温貯蔵庫を高湿度に維持できるように改造し、雪室の条件に擬して実験を行った。実験は雪室低温区(温度1℃、湿度100%)、一般低温区(温度5℃、湿度88%)、対照区(室温)の3実験区を設け、コーテローゼ(赤)、パレオ(オレンジ)、ティネケ(白)、コールデンエンブレム(黄)の4種のバラを各5本ずつ供試して湿式貯蔵を7日間行った後、室内に取り出しその後の様子を観察した。切花の品質として糖質を測定することとし、花弁のグルコース、フルクトース、スクロースの含量を貯蔵前後でガスクロを用いて測定した。花色は色彩色差計で、花もちは開花度で判定した。貯蔵中から貯蔵後にかけて4種の切花に花色の変化がみられた。ローテローゼは雪室区で花のくすみが観察され、出庫後の発色において他の実験区より劣化が見られた。パレオは雪室区と低温区ともに出庫後の花色の対照区のものより赤みを帯びた色であった。ティネケとゴールデンエンブレムでは貯蔵による花色への影響は観察されなかった。また、花弁の糖濃度の変化は雪室区のゴールデンエンブレムでは貯蔵前よりグルコースとフルクトースが増加したが、ティネケは逆にわずかながら減少した。また、ローテローゼとパレオでは糖濃度の変化はほとんど見られなかった。今年度はカビの発生についての調査も平行して進めたが、これについては今後も継続して調査し、発生防止対策を検討する必要がある。