著者
渡辺 悠樹 村山 斉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.200-208, 2013
参考文献数
19

自発的対称性の破れは素粒子物理から原子核,物性,冷却原子,天体,更には初期宇宙論,化学,生物まで幅広く適用される重要な考え方である.特に連続的な対称性の場合はギャップのない励起,南部・ゴールドストーンボソンが現れ,長波長・低エネルギーの現象を決めている.しかし,何種類の南部・ゴールドストーンボソンがあるのか,エネルギーが運動量の何次で振る舞うか,という非常に基本的な問題に対して今まではケースバイケースで調べられていて,一般論がなかった.最近筆者らは南部・ゴールドストーンボソンを統一的に理解する一般論を提唱した.これはローレンツ不変な系で知られていた南部・ゴールドストーン定理を拡張したものになっている.今まで何がはっきりしていなかったのか,これで何が分かったのかを,磁性体,結晶等を例にできるだけ具体的に解説する.