著者
渡辺 悦子
出版者
同志社大学歴史資料館
雑誌
同志社大学歴史資料館館報
巻号頁・発行日
no.9, pp.7-21, 2005

京都市上京区に所在する本学新町キャンパスの地には明治以前は摂関家の一流・近衛家の別邸「桜御所」があったことはよく知られている。この「桜御所」の名称は近世以降のもので、現存最古の洛中洛外図屏風では「近衛殿」と称され、さらにそれ以前は、近衛家代々の御影を祀る施設をもつ「御霊殿」と呼ばれていたようである。(「御霊殿」には近衛家代々の嫡女が居住し、御影を祀ったと考えられている。本稿は、『後法興院記』をはじめとする近衛家当主の日記等より、近衛室町に所在した近衛家の本邸が焼亡した応仁・文明の乱以降、「御霊殿」は近衛家当主の住む邸宅「近衛殿」となるが、以降も御霊殿の称を持つ近衛家の女性は戦国期を通して存在し続け、その消滅は戦国期から近世初頭であること、また同時期に皇族から近衛家に養子に入った近衛信尋が「御霊殿」に居住する頃を前後して「近衛殿桜御所」との名称に変化することを明らかにした。
著者
松崎 政代 春名 めぐみ 大田 えりか 渡辺 悦子 村山 陵子 塚本 浩子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_40-2_49, 2006 (Released:2008-06-30)
参考文献数
42
被引用文献数
7 5

目 的 妊娠期の健康度や生活習慣を評価する客観的評価指標は少ない。そこで,妊娠期において酸化ストレスマーカーの一つである尿中バイオピリンを測定し,妊娠期での値の特徴とその関連要因を明らかにし,その利用可能性を検討する。方 法 2004年7月2日から8月31日までの調査期間中にNクリニックに来院した妊婦のうち594名を対象妊婦群とし,妊娠初期・中期・末期に分類した。また,妊婦群の年齢にマッチングさせた,現病歴のない,非妊娠女性35名をコントロール群とした。妊婦群とコントロール群に対し,調査票および診療記録から基本情報,生活習慣,精神的ストレスとして精神的健康度(general health questionnaire: GHQ)の情報を得た。また午前中に採尿・採血を行い,尿中バイオピリン,血清中脂質代謝マーカー(アセト酢酸・3-ヒドロキシ酪酸・トリグリセリド・総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロール・遊離脂肪酸)と糖代謝マーカー(グルコース・グリコアルブミン)の測定を行った。結 果 妊娠初期・中期・末期における妊婦の尿中バイオピリン値は非妊娠女性に比して有意に高値(p<0.001)であった。妊娠末期の尿中バイオピリン値は,妊娠初期,中期の値に比して有意に高値(p<0.001)であった。 尿中バイオピリン値に関連する要因として,現病歴があること,高血圧や蛋白尿といった妊娠高血圧症症状があること,グルコースおよび精神的健康度GHQ得点と正の関連,HDLコレステロールと遊離脂肪酸と負の関連が明らかになった。尚,妊娠高血圧症症状は,3-ヒドロキシ酪酸などの脂質代謝と関連があった。結 論 妊婦の尿中バイオピリン値は,妊娠末期に最も高値を示し,非妊娠女性よりも高値を示すという特徴が明らかになった。また,脂質代謝と関連のある妊娠高血圧症症状や現病歴,糖代謝,精神的健康度との関連が見出され,尿中バイオピリン値の妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての利用可能性が示唆された。