著者
長野 正幸 照山 絢子 福元 美紀 渡邊 友美 中村 美佳子 百崎 良
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.299-305, 2018-12-01 (Released:2018-12-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2

脳外傷はしばしば,行動障害や復学困難を引き起こす.しかし,脳外傷後の復学困難を誘起する因子についてはいまだ明らかにされていない.本研究の目的は若年脳外傷患者における1年以内の復学困難に関連する因子について探索的に検討することである.本研究は既存データセットの二次解析である.米国のTraumatic Brain Injury Model Systems National Databaseに登録された脳外傷患者(受傷時16歳)のデータを用いた.1年以内に復学できた者とできなかった者とで2群間比較をし,脳外傷重症度に着目したサブグループ解析を追加した.教育歴が10年未満の者を除外し,合計309人の脳外傷患者が抽出された.そのうち246人(80%)の患者は1年以内の復学が困難であった.復学した患者群では復学できなかった患者群に比べ重症脳外傷例が少なかった(29% vs 44%,P = 0.03).また,復学した患者群では復学できなかった患者群に比べリハビリテーション期間が長く(平均日数: 40 vs 29; P = 0.001),脳外傷重症度によるサブグループ解析でも重症脳外傷者群(平均日数:46 vs 29,P = 0.02),非重症脳外傷者群(平均日数: 37 vs 26,P = 0.02)ともに同様の結果であった.脳外傷重症度に関わらず,リハビリテーションの不足が脳外傷後の復学困難に関連していた.
著者
渡邊 香織 本岡 夏子 古川 洋子 渡邊 友美子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.256-263, 2013-11-30 (Released:2017-01-26)

【目的】本研究は,縦断的調査により妊娠期の身体活動量を明らかにし,不安および分娩経過との関連性を検討することを目的とした.【方法】対象は妊娠の経過が正常である初産婦28名であり,分娩経過との関連についての検討は37週以降の経膣分娩をした20名(正常分娩)を対象とした.また,帝王切開などの8名を異常分娩として,正常分娩との比較を行った.身体活動量(歩数,活動強度・時間)は,妊娠20週より分娩前日までの期間に,連続して生活習慣記録機を装着して得られたデータを対象とした.身体活動量は活動強度の低い順から,強度1〜3を低強度,4〜6を中強度,7〜9を高強度とそれぞれの身体活動に分類し時間を求めた.不安は妊娠13〜18週,妊娠24〜27週,妊娠32〜36週の3回,State-Trait Anxiety Inventory(以下STAI)の測定を実施した.【結果】歩数について回帰分析の結果,正常分娩であった妊婦では「歩数=8,719.73-55.76×妊娠週数」(p<0.001,Adjusted R^2=.646),異常分娩であった妊婦では「歩数=8,966.29-62.37×妊娠週数」(p<0.05, Adjusted R^2=.913)の回帰式が得られた.妊娠32〜36週のSTAIと妊娠末期の身体活動量との相関では,STAI状態不安と平均歩数,及び中強度身体活動時間に中程度の負の相関を認め,分娩所要時間と体重増加量,及び状態不安に中程度の正の相関を認めた.さらに「分娩所要時間(分)=693.43+69.97×体重増加量-7.24×妊娠末期の妊娠中期に対する歩数の比率」の重回帰式が得られた(p<0.05,Adjusted R^2=.339).【結論】妊娠中期以降の歩数は,妊娠週数を重ねるに従い減少すること,妊娠中の歩数よりも妊娠経過に伴う身体活動量の減少率と体重増加量が分娩所要時間に影響することが明らかになった.また,日常生活に中強度以上の身体活動に相当する早歩きを取り入れることで,妊娠期の不安を軽減できる可能性が示唆された.