- 著者
-
筒井 健一郎
渡邊 正孝
- 出版者
- 日本生理心理学会
- 雑誌
- 生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.5-16, 2008-04-30 (Released:2012-11-27)
- 参考文献数
- 43
- 被引用文献数
-
3
本論文では, 脳内の報酬系にかかわる最新の知見を取り上げてレビューする。黒質緻密部 (SNc) および腹側被蓋野 (VTA) のドーパミン細胞は, 側坐核, 背側線条体, 辺縁系, および前頭連合野など, さまざまな報酬関連領域に軸索を投射しており, 報酬の脳内表現に重要な役割をはたしている。ドーパミン細胞が報酬の予測誤差の検出に関わっているのに対して, 側坐核や辺縁系に属する複数の脳領域は, 報酬から快感や喜びを生じさせることに関わっている。背側線条体は, 特定の刺激や行為の価値を学習することに関わっており, パブロフ型および道具的条件づけの成立に重要な役割を果たしている。前頭連合野は, 行為を実行したり将来の行動を組織化したりするための動機づけの支えとなる, 短期および長期の報酬期待に関わっている。また, 行動選択肢の評価, 行おうとする行為の検討や, 行為の結果のモニタリングなどに関わることにより, 報酬情報に基づいた意思決定に重要な役割を果たしている。