著者
渡邊 祐紀 赤林 朗 池田 智子 富田 真紀子 渡辺 直紀 甲斐 一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.111-119, 2000-09-13
被引用文献数
3

高齢化社会を迎えつつある現在、医療現場における高齢者の治療法決定への参加のあり方は、早急に検討するべき課題となっている。本研究では、心肺蘇生法(CPR)を取り上げ、寿命があと2、3ヵ月の末期癌の入院患者において、CPR施行の決定者、CPR施行の希望、患者本人の意向と家族や周囲の者の意見が異なった際の対応等について、中・高齢者(50歳以上)を対象に面接による意識調査を行い、CPR施行について意思決定の過程を考察した。調査は1999年5月〜6月に都内A寺において行われ、110名より有効回答が得られた。解析の結果、患者自身による治療法決定の考え方(自己決定)が中・高齢者の間に浸透していることが明らかになり、CPR施行を希望しないという回答者が多数を占めた。また、決定者間で意見に不一致が見られた場合には、必ずしも患者本人の意向を優先しなくてもよいとする傾向や、おかれた状況が患者本人か家族であるかによって、回答内容が変化する傾向も明らかになった。