著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.31-50, 2000-11

現在,組織や制度を動的な観点から説明しようとする,進化論的な諸研究が進展している。それらは,(1)進化経済学的アプローチ,(2)進化ゲーム理論的アプローチ,(3)進化生態学的アプローチ,といったものに分類できる。この進化論的アプローチの主唱者の中で,ネルソン=ウィンターを始め,少なからぬ人達が,ダーウィン主義の方法を否定し,ラマルク主義を標榜している。その理由としては,「偶然性を仮定するダーウィン主義は,進化を盲目的淘汰の結果と見なすため,組織や制度の進化の中心である,行為者の目標志向的な学習過程を取り扱
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.143-170, 2000-04

ゲーム理論は,行為者にとっての状況を理念的に再構成することで,行為者の選択を説明するものである。近年の進化論的ゲーム理論の誕生以来,協調的な制度や規則の説明がより容易になってきた。協調的な関係を分析する場合,以前より注目されていた問題は,囚人のジレンマ・ゲーム状況で,外的な拘束力なしで協調関係が出現し,維持できるかということであった。多くの研究者がこの問題に取り組んだが,その中で最も高い評価を受けたのが,アクセルロッドの研究であった。彼はESSに近似した集団安定性という観点から,常にフリー・ライディングが存在する問題状況でも,「シッペ返し」という協調的な規則が自生的に集団安定(ESS)になると主張した。しかし当稿では「シッペ返し」も少数では,「全面裏切」が支配する集団には侵入が困難であると明確にされた。一方,タカ-ハト・ゲーム(チキン・ゲーム)は,フリーライディングのインセンティブの下でも協調関係が可能な問題状況である。この状況下で協調的な慣習・規則が,自生的に出現できることを示したのが,サグデンの「自生的秩序」の議論である。この議論はナッシュ解が協調的な規則によって実現可能になるというもので,わが国企業をめぐる協調的関係,つまりカシカリ関係や系列生産を説明する上でも有効なものである。
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.33-51, 1980-12-30
著者
山本 哲生 墻内 千尋 荒川 政彦 渡邊 誠一郎 渡部 直樹
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

惑星系円盤におけるダストの衝突進化と熱進化の素過程,観測結果を読み解くうえで重要な光学に関する研究,ダスト生成とその後続解析実験,ダスト衝突実験,氷表面における分子反応等,物質進化の総合的研究を展開した.加えて,この分野の研究基盤形成にも貢献した.研究グループの交流を促進し,国内の関連研究グループの組織化を図り,研究コミュニティー形成を積極的に推進した
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.25-41, 2008-10

樫原正勝教授退官記念号論文生物の進化から,制度や科学的知識の進化に至るまで,高次から低次にいたるまで,すべての進化は,何らかの定向性の性格を持ちうるといえる。この場合,一見ラマルク的に見える進化も,広い意味でのダーウィニズムの枠組みの中で,説明可能であり,生物学における進化も社会制度の進化も,基本的には,同じ方法で説明できる(方法の一元性)。また,ダーウィニズムの,遺伝―変異―淘汰,の過程は,状況の論理の応用によって,次の問題解決の図式,問題(P1)→暫定的解決(TT)→誤り排除(EE)→問題(P2)によって説明できる。更に,制度や科学的知識のような,ポパーのいう世界3 (人間精神の産物)における進化は,生物体のような世界1 (物的世界)における進化と比べて,合理的な推測と批判が大きな要素となり,そのため,あたかも定向進化や獲得形質の遺伝と言えるような状況も,進化過程の中に見出しやすくなる。